文/一志治夫

無農薬無肥料で育てた「幻の米」

どんな新米より美味しい古米−−。
佐々木要太郎さんがつくるのは、そんな唯一無二の米だ。

佐々木要太郎さんは、遠野市内の田んぼで約3町歩から120俵ほどの米を収穫している。いずれも無農薬無肥料によるもので、品種は「遠野一号」のみ。昭和初期に誕生したものの、戦後、次々と生まれる新品種に押され、いつの間にか廃れてしまった米である。

遠野一号が遠野でつくられ始めたのは、1935年。農薬が本格的に使われ出すのは戦後だったから、その前に生まれた品種ということになる。

佐々木さんは、あるとき、新米の「あきたこまち」と、1年寝かせた「遠野一号」の食べ比べをしたことがある。品種については触れずに、2つの米をテスターに食べ比べてもらい、どちらの米に甘味があるかを尋ねた。すると、10人中10人が「遠野一号」と答えたのだ。

「日本人の新米信仰は、現代の米と密接に関連しています。甘さを求めて意図的に糖質を組み込んだ現代米、とりわけ慣行栽培で育てられた現代米は、その糖質が酸化して劣化しやすいと感じていますし、古米臭が出やすいのです。逆に遠野一号の新米の味は、さっぱりしていて淡泊。けれども、それを寝かせることで旨味が上がっていき、糖質の強い米より美味しくなる。逆に現代の米の多くは、収穫時が旨味のピークでその後は徐々に劣化、酸化していくため、熟成には向かない。私の経験上、そう考えています」

佐々木さんはすでに20年間、無農薬無肥料で米を育て続けている。20年間、農薬も使わず、肥料も与えないできた田んぼは、全国的にも珍しく、見学者が絶えない。

「あるとき、南から北上しながら、日本全国の田んぼを見て回ってきたソムリエがいらしたことがあります。日本におけるドメーヌとは、ナチュールワインとは何なのかを知りたいと、蔵だけでなく、畑や田んぼを見てきたそのソムリエは、うちの田んぼの様相だけがそれまで見てきたものとまったく違う、と言ってました。畦の土、畦の草、虫、鳥、稲の間から顔を覗かせる雑草、とすべてが生き生きとしていて、生き物たちの饗宴が見て取れると言うのです。

ブドウの木は古木が多く、土が大事だとよく言われる。一方、稲は、1年1年新たな根から実りをつける。その違いはあるけれども、土が大事なのはワインと一緒。土のテンションが問われるのは、木も稲も同じなんです」

佐々木さんがめざすのは、米の可能性の追究だ。

「米が育つ土を探求して、土壌の改善、回復をはかりたいというのが大きな目標。言うまでもなく、人間は土なしに生きてはいけない。植物や木々は、土の中の微生物の代弁者であり、微生物たちは地球の代弁者。健全な発酵は、健全な土から生まれ、私たちの体内へと運ばれる。健全な土から育つのが健全な米であり、その先に酒や料理があるというのが、私の考えなのです」

* * *

『遠野キュイジーヌ 土から考える「とおの屋 要」の米づくり、どぶろく醸造、発酵料理』(佐々木要太郎 著)
小学館

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