取材・文/池田充枝

ジャン=ミシェル・バスキア Untitld,1982 Yusaku Maezawa Collection,Chiba Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar,New York

ジャン=ミシェル・バスキア Untitld,1982 Yusaku Maezawa Collection,Chiba Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar,New York

1980年代のアートシーンに彗星のごとく現れたジャン=ミシェル・バスキア(1960-88)。
ニューヨークのブルックリンに生まれたバスキアは、マンハッタンのストリートで、アル・ディアスとSAMO(C)の名で手がけた詩的なグラフィティで名を馳せます。
1980年伝説的なグループ展「タイムズ・スクエア・ショウ」で初めて絵画作品を展示、1981年イタリアのガレリア・エミリオ・マッツォーリで自身初の個展、1982年アメリカでは初となる個展を開き評価を確立します。
同82年に最年少で国際美術展「ドクメンタ7」、83年には現代美術特別展「ホイットニー・バイエニアル」に参加。アンディ・ウォーホル、キース・へリングら当時を象徴するアーティストとの交流を深め、ニューヨークのアートシーンに旋風を巻き起こす最中、わずか27歳で世を去りました。

10年間の活動期間に、強烈なエネルギーで3000点を超すドローイングと1000点以上の絵画作品を残したバスキアは、没後ますます評価が高まっています。

ジャン=ミシェル・バスキア Prastic Sax,1984 agnès b. collection Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat Licensed by Artestar,New York

ジャン=ミシェル・バスキア Prastic Sax,1984 agnès b. collection Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat Licensed by Artestar,New York

バスキアの、日本初となる大規模展が開かれています。(11月17日まで)

本展は日本オリジナルの企画で、約130点の絵画やオブジェ、ドローイングなどでバスキアと日本との絆、日本の歴史や文化が創作に及ぼした影響を明らかにします。

ジャン=ミシェル・バスキア Self Portrait,1985 Private Collection Photo:Max Yawney Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar,New York

ジャン=ミシェル・バスキア Self Portrait,1985 Private Collection Photo:Max Yawney Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar,New York

本展の見どころについて、日本側監修の美術史家、宮下規久朗神戸大学教授よりご寄稿いただきました。

「1988年にわずか27歳で没したバスキアは、現代美術の伝説である。生前から有名であったが、とくに21世紀になってから飛躍的に高く評価されるようになった。作品の力強さや色彩感覚の見事さ、黒人やアフリカのアイデンティティの表現が見直されたのである。

その作品はいまだ個人蔵のものが大半であり、実際に目にする機会は多くない。これに対し、日本では、多くの公立美術館がバスキアの重要な大作を収蔵している。日本は世界有数の“バスキア大国”なのだ。今回の展覧会は、とくにバスキアと日本との関係に焦点を当てたもの。

バスキアは1983年以来、三回も来日し、何度も個展やグループ展を開催した。彼は、円記号や平仮名、空手や五重塔など、日本の伝統文化や80年代の日本の世相を反映したモチーフを作品に取り入れた。《オニオンガム》には、仏像のような顔が描かれている。

ジャン=ミシェル・バスキア Onion Gum,1983 Courtesy Van de Weghe Fine Art,New York Photo:Camerarts,New York Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat Licensed by Artestar,New York

ジャン=ミシェル・バスキア Onion Gum,1983 Courtesy Van de Weghe Fine Art,New York Photo:Camerarts,New York Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat Licensed by Artestar,New York

日本に関するモチーフでもっとも多いのは、《ナポレオン》に描かれたような円記号であった。デビュー後に早くから富を手に入れたバスキアは、金銭に無頓着だったと言われているが、作品にはしばしばドル記号やドルのコインを書き込んでいる。

ジャン=ミシェル・バスキア Napoleon,1982 Private Collection Photo:John R.Glembin Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar,New York

ジャン=ミシェル・バスキア Napoleon,1982 Private Collection Photo:John R.Glembin Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar,New York

当時の日本はバブル経済に向かう高景気の時代であり、ジャパンマネーの強さを反映したのかもしれない。近年、日本人によってバスキア作品がアメリカの美術作品では史上最高額で落札されたが、円を繰り返し表現したバスキアは、これを予言したかのようだ」

ジャン=ミシェル・バスキア Carbon/Oxygen,1984 Hall Collection Photo:Raul Valverde / onwhitewall.com Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar,New York

ジャン=ミシェル・バスキア Carbon/Oxygen,1984 Hall Collection Photo:Raul Valverde / onwhitewall.com Artwork (C) Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar,New York

バスキアの作品が多数一堂に会するまたとない機会です。ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
バスキア展 メイド・イン・ジャパン
会期:2019年9月21日(土)~11月17日(日)
会場:森アーツセンターギャラリー (六本木ヒルズ森タワー52階)
住所:東京都港区六本木6-10-1
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
公式サイト:www.basquiat.tokyo
開館時間:10時から20時まで、ただし9月25日(水)・26日(木)・10月21日(月)は17時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:9月24日(水)

取材・文/池田充枝

 

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