マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回は、管理職やリーダーが持つべきチームマネジメントについて考察します。

はじめに

組織において、一際抜きん出た成績を上げるエース社員は短期的な成果の柱となります。しかし、そのエースが会社の規律や基本的なルールを守らない時、リーダーは対応に苦慮します。

「ルールを守らせて反発を受け、成績を落とされては困る」「ルール違反を黙認しても、エースの成果の方が重要だ」。多くのリーダーがこの思考に陥り、「成績優秀者への特別扱い」という最も危険な行為を選択します。

目先の数字を守ろうとするこの「特別扱い」は、結果的に以下の5つの致命的な問題を引き起こし、組織運営の根幹を腐らせる毒となります。本稿では、リーダーが絶対にやってはいけない5つの行為(特別扱いの結果)と、組織の活力を維持し成果を最大化するために例外なく持つべき「たった一つのルール」について解説します。

1.エースが上司のコントロールを離脱する

上司が能力に関係のない基本的なルールですらエースに守らせられなければ、エースは上司の指示を根本的に聞かなくなります。

組織におけるルールは「全員が守るべき共通の前提」です。これを破っても許される環境は、エースに「自分の考えや行動は、組織のルールや上司の指示に優先する」という誤った錯覚を与えます。

目標変更や戦略変更が必要になった際、この錯覚が決定的な障害となります。エースは自分の考えを組織の決定より優先し、上司や会社の方針に従わず反発するようになります。能力に関係ない基本ルールすら守らなくて良い環境は、「自分は組織の一員である」という認識を弱め、マイルール優先の思考を強化します。結果、上司は優秀な部下をコントロール不能な状態に陥らせ、部下の能力を組織の成果に結びつけることが不可能になってしまうのです。

2.他のメンバーの士気が低下しチームがしらける

エースへの特別扱いは、他の大多数のメンバーに対し、ルールを守る必要性、ひいては組織への貢献意欲を失わせます。

会社組織において、公平性は組織の活力を支える「信頼資本」です。エース一人が突出した成果を上げていても、そのルール違反を許容する環境は、他のメンバーの仕事への集中を妨げ、チーム全体の成果を下げることに繋がります。

特定のスター選手にだけファウルを取らない「えこひいき」をする審判がいた場合、真面目な選手たちは「努力してルールを守るのが馬鹿らしい」と感じ、試合への意欲や集中力は著しく低下するでしょう。会社組織も同様です。「成績が良ければ自由に振る舞っていい」という前例は、チーム内の不公平感を増幅させ、「ルールを守って損をする」という最悪の空気感を生み出し、優秀なメンバーまでもがルール違反側に回るリスクを招きます。

3.健全な競争環境が生まれず能力の底上げが止まる

上司のメンバーへの対応が異なり、平等性が感じられない環境では、健全な競争意識が働きません。組織の成長は、メンバーがお互いに切磋琢磨し、能力を高め合う競争環境によって加速されます。この競争を成立させるためには、「ルールの下での平等な環境」が不可欠です。

特定のメンバー(エース)に対してだけルールが緩くなったり、上司の対応が異なったりする場合、他のメンバーは「どうせ頑張っても正当に評価されない」と感じ、競争から撤退します。

エース一人の成果があっても、その他のメンバーがついてこない状態は、「組織的な能力の底上げ」が起きないことを意味します。この状態が続くと、組織全体の成長スピードが鈍化し、エースが抜けた際の脆弱性が高まります。

4.上司のマネジメント機能が完全に喪失する

部下にルールを守らせるという最も基本的なコントロールを放棄することは、上司自身が組織において機能しなくなることを意味します。

上司の本来の役割は、チームの成果を最大化することであり、そのためには、メンバーの能力を最大限に引き出し、逸脱行為を指摘し、正しい方向へ修正する権限が必要です。

能力に関係のない単純なルールですら守らせることができないリーダーが、外部環境の影響を大きく受ける売上、品質、納期といった複雑で高度なチーム目標を管理・達成に導くことは、極めて困難です。結果、上司はマネジメントの権威と機能を喪失し、現場の調整役や火消しに終始することとなり、経営層が求める中長期的な戦略立案に集中するための時間を奪われてしまいます。

5.チームの一体感が醸成されず生産性が低下する

みんながルールを守らない状態は、「私たちは同じチームである」という共通認識を破壊します。

ルールは、組織における「共通認識という名のインフラ」です。このインフラが機能しないと、個人がチームを意識できず、自分の意思のみで行動する「個人事業主の集まり」のような状態に陥ります。

共通認識がない状態でのコミュニケーションは、組織の生産性を高める上で決定的な障害になります。ルールが機能しない状態は、利己的な発言や行動を増やし、個人間の衝突にも繋がり、組織としての行動スピード、意思決定の正確性、そして最終的な成果を最大化する上での大きな障害となります。

やってはいけない5つの行為と、やるべき“たった一つのルール”

それでは、この記事のまとめです。

エースへの特別扱いという「やってはいけない行為」は、結果的に以下の5つの問題を生み出し、組織を機能不全に陥らせます。

1.エースが上司のコントロールを離脱する
2.他のメンバーの士気が低下しチームがしらける
3.健全な競争環境が生まれず能力の底上げが止まる
4.上司のマネジメント機能が完全に喪失する
5.チームの一体感が醸成されず生産性が低下する

これらの問題を回避し、チームを健全に機能させるために、リーダーが持つべき「たった一つのルール(やるべきこと)」は極めてシンプルです。

それは、「部下全員に、設定されたルールを公平に、そして完全に守らせる」ことに尽きます。

「彼はエースだから、多少の遅刻は許される」といった特定の個人への「特別扱い」は、他の大多数のメンバーの「公平性」への信頼を裏切り、組織全体を蝕む「毒」となります。上司の役割は、誰に対しても公正なジャッジを下す「審判」です。その審判が持つべき「笛(ルール)」は、相手が誰であろうと一貫して公平でなければなりません。 全員にルールを適用することこそが、組織の規律と公平性を担保し、最終的に組織のパフォーマンスを最大化させる唯一の方法なのです。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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