文/平松温子
空前の猫ブームといわれるようになって久しい昨今、ネットのニュース一覧にも毎日のようにいくつも猫関連の話題がのぼっています。でもそんな状況の今、愛猫家たちが最も懸念していることは、ブームの後で捨て猫が増えるのではないか、ということです。
実際にこれまでも、チワワブームの後にはあちこちに捨てられたチワワが現れるなど、特定のペットブームが去ると、その動物が捨てられてしまうことがしばしばありました。
飽きたら捨てる、需要がなければ捨てる、といった現象が繰り返される現実。命ある動物に対する無責任がどんな結果を生むか、今一度、真剣に考える時期にきているように思います。
外にいる猫を「自由きまま」という人もいますが、本当に外で暮らす猫たちは、自由きままに楽しく暮らしているのでしょうか。飼い猫がある日突然、捨てられたら、どうなるのでしょうか。
野良のお母さんからから生まれた野良猫も、外で楽に、楽しく生きているわけでは決してありません。いつ命の危険にさらされるかわからない日々を送っているのです。
まして、外での生活に不慣れな飼い猫がいきなり外に放り出されたら……。
生まれてこのかたずっと、家の中で、人からご飯をもらったり、遊んでもらったりして過ごしていた猫です。野生動物なら狩りをするでしょう。
でも、人に飼われていた猫に、それがうまくできるでしょうか。
お母さん猫は通常、子猫にハンティングの仕方を教えます。
兄弟猫とは、プロレスごっこをしたりして、噛まれたり引っかかれたら痛いということや、コミュニケーションの仕方を学んだりします。
でも、ブリーダーのところで生まれて、ペットショップで売られていたような猫であれば、もしかしたらお母さん猫や兄弟猫からかなり早い時期に引き離されている可能性もあります。
そういう猫は、ハンティングの仕方も教わっていませんし、場合によっては他の猫たちとうまく共存する方法もわからないかもしれません。
そんな猫がある日突然、外の世界に放り出されて、うまく食べていけるでしょうか。
空腹のあまり、ゴミ箱を漁って、住民に迷惑をかけていじめられるかもしれません。
カエルなどを食べて、感染症にかかるかもしれません。
トイレがないから、人の家の花壇でトイレをして、怒られるかもしれません。
道路を渡っていて、車にはねられてしまうかもしれません。
他の猫と喧嘩をして大けがをケガを負ったり、病気(血が出るような喧嘩であれば猫エイズ感染の可能性も)をもらってしまったりすることもあるかもしれません。
寒い季節なら、風邪をひいたり、低体温になったりして、あっという間に命の灯がかき消えてしまうかもしれません。
人に飼われていた経験から、人恋しくて誰彼構わずなついてしまうこともあるでしょう。でも、みんながみんな、親切な人にからご飯をもらえたり、保護してもらえたりするとは限りません。
人慣れしているあまり意地悪な人に近づいてしまい、虐待されたり、残酷な仕打ちを受けることだって考えられます。現に、そうした悲しい事件がたくさん報告されています。
地域によっては、所有者不明の動物として保健所に連れて行かれて、殺処分されてしまうことだってあるかもしれません。
一度は家族として一緒に暮らしたはずの猫を、どうなるかわからない外の世界に放置するのは、とても恐ろしい結果を迎える可能性があるのです。
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