取材・文/池田充枝
正倉院宝物は、光明皇后が聖武天皇の御遺愛品をはじめとした品々を東大寺大仏に捧げられたことに由来し、およそ1260年にわたり守り継がれてきた世界的にも比類のない文化財です。
法隆寺献納宝物は、明治11年に法隆寺から皇室に献納され、昭和22年に国に移管された飛鳥・奈良時代を代表する美術品で、現在は東京国立博物館が所管しています。正倉院宝物と並ぶ貴重な文化財です。
天皇陛下の御即位を記念して、正倉院宝物と法隆寺献納宝物が一堂に会する展覧会が開かれています。(11月24日まで)
本展では、わが国の7世紀美術を代表する法隆寺献納宝物と、8世紀を代表する正倉院宝物の代表作を中心に約110件の作品を公開します。
本展の見どころを東京国立博物館、特別展室長の猪熊兼樹さんにうかがいました。
「このたびの天皇陛下の御即位という御慶事に祝意を込めて、東京国立博物館では、特別展『正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―』を開催いたします。本展は、奈良の正倉院に伝わった宝物を中心に、東京国立博物館が所蔵する法隆寺献納宝物などを合わせて展示するものです。
正倉院宝物は、天平勝宝八歳(七五六)に光明皇后が聖武天皇の御遺愛品などを東大寺の大仏に捧げられたことに由来するもので、天皇の勅封によって厳重にまもられてきました。正倉院は『シルクロードの終着点』などといわれており、例えば、代表的な宝物の『螺鈿紫檀五絃琵琶(前期展示)』はインドに起源をもつ、現在では失われてしまった楽器ですが、その装飾として駱駝に乗った西域人や宝相華という華麗な花々が螺鈿で表わされており、当時の面影を留めた素晴らしい工芸品です。
一方、法隆寺献納宝物は、明治時代に法隆寺から皇室に献納された品々で、同寺の創建期や再建期に遡りうるものが伝わっており、正倉院宝物と双璧をなす存在とされています。両宝物を合わせてご覧になって、古代日本の国際色豊かな文化をお楽しみいただきたく思います。
また本展では、明治時代以降の正倉院宝物に関する保存・修理・調査・復元模造などの活動についても紹介します。本展を通じて、皇室がまもり伝えた美、そして今後も受け継がれてゆく悠久の美を御覧ください」
飛鳥・奈良時代の貴重な宝物を目の当たりにすることのできるまたとない機会です。ぜひ会場でご鑑賞ください。
【開催要項】
御即位記念特別展 正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―
会期:2019年10月14日(月・祝)~11月24日(日)
前期10月14日~11月4日 後期11月6日~11月24日
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話番号:03・5777.8600(ハローダイヤル)
https://artexhibition.jp/shosoin-tokyo2019/
開館時間:9時30分から17時まで、金・土曜日、11月3日(日・祝)、4日(月・休)は21時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし10月14日、11月4日は開館)、11月5日(火)
取材・文/池田充枝