取材・文/池田充枝
1865年の初版出版以来、170を超える言語に翻訳され、発行総部数1億部ともいわれる世界的ベストセラー、『不思議の国のアリス』。
作者のルイス・キャロルは、英国オックスフォード大学のクライスト・チャーチの数学講師でした。幼いころから創作意欲に富み、詩や物語を書く青年でしたが、彼の人生を大きく変えたのが、新しく赴任してきたリデル学寮長の娘、アリス・リデルとの出会いです。
アリスにせがまれて語った物語が「地下の国のアリス」で、その話が気に入ったアリスから「このお話を本に書いて」とねだられたキャロルは、自筆の挿絵入りの本を完成してアリスに贈りました。
その物語は周囲の人からも絶賛され、出版を勧められたキャロルは、当時の人気画家ジョン・テニエルに挿絵を依頼しました。1865年、『不思議の国のアリス』が出版されるやいなや、キャロルは一躍人気作家となり、テニエルの挿絵は後のアリス像を決定づけることになりました。
150年経つ今も世界中で愛される『不思議の国のアリス』の魅力が満載の展覧会が開かれています。(11月17日まで)
本展は、著者ルイス・キャロルの日本初公開となる直筆画(横浜会場のみ)や、ジョン・テニエルの原画、この物語に創作意欲を刺激された国内外の現代アーティストたちの作品など、約200件の展示品で『不思議の国のアリス』の世界を展開します。
本展の見どころを、主催の東映、高見澤庸さんにうかがいました。
「『不思議の国のアリス』がその誕生から現在に至るまでこんなにも世界中で世代を超えて愛され、様々なジャンルに影響を与え続けているのはなぜなのか―、本展では様々な角度からこの圧倒的な存在感を放つ『アリス』の魅力に迫っていきます。
まず見ていただきたいのは、初版本の挿絵を描いたジョン・テニエルの原画です。1865年に『不思議の国のアリス』が出版され話題をさらったとき、その功績はキャロルに帰すべきか、テニエルに帰すべきかが真剣に論じられたくらい、『アリス』の成功は物語と挿絵が見事に融合したこの初版から始まったと言えるでしょう。
テニエルの挿絵を原点に、様々なアーティストによる挿絵が世界中で生まれ、『アリス』の世界は書籍にとどまらず、映画やアニメーション、音楽、舞台、ファッションなど様々な分野に広がっていきました。そして、現在でも多くのアーティストたちが創作意欲を刺激され、新しい『アリス』作品が生まれ続けています。本展では、アリスの世界観を独自の解釈で表現した国内外で活躍する芸術家との共演も見どころのひとつです。
日本初公開を含む珠玉の作品群が、皆さまを不思議な国へ誘います」
ルイス・キャロルの自筆スケッチから最新のオマージュ作品まで、完全版ともいえる展覧会です。ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
不思議の国のアリス展
会期:2019年9月21日(土)~11月17日(日)
会場:そごう美術館(横浜駅東口 そごう横浜店6階)
住所:横浜市西区高島2-18-1
電話番号:045・465・5515(そごう美術館直通)
公式サイト:http://www.alice2019-20.jp
開館時間:10時から20時、最終日の11月17日は17時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:会期中無休
巡回:福岡市美術館(12月3日~2020年1月19日)、静岡市美術館(2020年2月1日~3月29日)、その後名古屋、新潟へ巡回予定
(※使用画像には透かしが入っているものがあります)
取材・文/池田充枝