取材・文/池田充枝
近代日本画を代表する横山大観(1868-1958)・菱田春草(1874-1911)・川合玉堂(1873-1957)・川端龍子(1885-1966)は、いずれも伝統をふまえながら新しい時代に即した絵画を模索し、日本画の発展を導きました。
一方で、彼らの主な活動の場は異なっています。大観と春草は日本美術院で、玉堂は官展を中心に、龍子は自ら主宰する青龍社において、さまざまな技法や表現を試み、革新的な日本画を生み出しました。
大観・春草・玉堂・龍子の作品が一堂に会する展覧会が開かれています。(10月27日まで)
本展では、南画とやまと絵を融合させた大観《作右衛門の家》、光や空気の抽出に挑んだ「朦朧体」の春草《釣帰》、田園の情景をいきいきと描いた玉堂《早乙女》、第1回青龍展に出品された龍子《鳴門》など代表的な作品が紹介されます。
本展の見どころを、山種美術館の館長、山﨑妙子さんにうかがいました。
「1966年、東京・日本橋兜町に開館した山種美術館は、2009年に渋谷区広尾に移転以来、本年で10年目となります。その記念すべき年に開催する本展では、当館が所蔵する横山大観・菱田春草・川合玉堂・川端龍子の代表的な作品を一挙公開いたします。
展覧会では、琳派からの影響がみられる春草《月四題》、大観が初めて手がけた水墨画巻《楚水の巻》など、新たな日本画の創造を目指す画家たちが挑んだ、多彩な表現をお楽しみいただきます。4人の画家の作品を通して、近代における日本画の発展の軌跡をご覧いただければ幸いです。是非この機会に、日本画壇を牽引した画家、大観・春草・玉堂・龍子の作品をご堪能ください。
さらに、晩年の大観・玉堂・龍子の3人による松竹梅展(1955-57年、画廊・兼素洞で開催)にも注目します。松竹梅展は、私の祖父である、当館創立者・山﨑種二(1893-1983)の希望により企画された展覧会です。種二は彼らと交流を重ねながら作品を蒐集していました。本展では、当館所蔵の松竹梅展の作品全点を展示し、彼らの交流の様子にも注目します」
日本画の革新に尽力した巨匠たちの作品に心うたれます。ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
山種美術館 広尾開館10周年記念特別展 大観・春草・玉堂・龍子―日本画のパイオニア―
会期:2019年8月31日(土)~10月27日(日)
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
http://www.yamatane-museum.jp/
開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし9月16日、23日、10月14日は開館)、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)
取材・文/池田充枝