文/編集部
『サライ』本誌でも活躍している写真家・高橋昌嗣さんが撮影してきた、文士たちの愛用品の写真展が、東京・南阿佐谷のギャラリーで開催されている(~2017年10月28日まで)
展示されているのは、次のような錚々たる面々の、愛用の品々の写真だ。
山口瞳の帽子、向田邦子のシャツジャケット、金子みすゞの手帳、中山義秀のハガキ、芥川龍之介のマリア観音像、小泉八雲の蛙の灰皿、佐佐木信綱の風帽、椎名麟三の鉛筆削り、田山花袋の版木、西田幾多郎の人形、有吉佐和子の三味線、川端康成の土偶、森鴎外の双六盤、斎藤茂吉のバケツ、志賀直哉の杖、与謝野晶子の訪問着、井上靖の靴、坂口安吾のストップウオッチ、梶井基次郎の鞄、北原白秋の硯箱、尾崎放哉のインク瓶、壺井栄の姫鏡台、寺山修司の人形、樋口一葉の櫛、田中英光の本、岡本かの子のロケット、萩原朔太郎のギター、高村光太郎の長靴、中勘助の匙、野上彌生子の伎楽面、谷崎潤一郎の長襦袢、山本有三の戸棚、泉鏡花の兎の置物、幸田露伴の煙管……これでもまだ、展示作品の半分にも満たない。
元になったのは、雑誌『文藝春秋』に連載された「文士の逸品」(1997年7月号〜2001年9月号連載)で撮影されたもの。いま『サライ.jp』で「漱石と明治人のことば」を連載中の文筆家・矢島裕紀彦さんとの二人三脚の取材で、その後、同タイトルの単行本として一冊に纏まった。
高橋さんは、次のように語る。
「文士が身近においた愛用品とは言いつつも何しろ遺品ですから、当初は、なんて辛気くさい仕事を始めたんだろうと思ったものでした。でも何度も撮影を続けていくうちに、その遺品達が持ち主の手を離れて独自の生命を持つ生き物のように感じられるようになったのです」
長い年月を経て奇跡的に残された品もあり、また経年変化で朽ちてようとしている品もある。
時として数々の作家達に創作の情熱を与えたり、時には折れそうな心を支えたりもしたであろう愛用品たちの姿は、作品からは伺えない文士たちの“人間”としての存在を、問わず語りに伝えてくれる。
【開催概要】
『高橋昌嗣展 文士の逸品 物から物語へ。』
■会期:2017年10月21日~10月28日
■会場:アートスペース煌翔
■所在地:東京都杉並区南阿佐ヶ谷3-2-29
■電話:03-3393-6337
■開場時間:11:00~19:00
■休館日:火曜
文/編集部