文・アンヌ遙香

世界一のおりん、が札幌にあると聞きつけかけつけたところ、まさしくそこは「北海道仏像ワンダーランド」だったのでした。

札幌中心部、宮の森。
高台を車で上がってゆくにつれ、周囲は立派な邸宅と、うっそうと茂る木々に囲まれていきます。
札幌でも有数の高級住宅地をぐんぐん抜けていけば、そこはすっかり冬景色の山の上。

赤のコントラストが印象的な「地蔵堂」がまず迎えてくれるのが大乗院です。
大乗院は曹洞宗のお寺。

薬王寺と国安寺の2つのお寺が大乗院によってまとめられています。

こちらには世界一の大鏧(だいきん・法要の時に鳴らす鐘)があり、私が出演している北海道の情報番組、『STVどさんこweekend』で「除夜の鐘」特集をした際にご協力いただいた寺院でした。

一般的な鐘とは形状が異なり、しかも鐘の音もまたひと味違うということでこれはぜひ直接鐘をつかせていただきたいと思っていたのです。

伽藍には鐘を上部に擁する地蔵堂や六角堂、本堂と見事な建造物が建ち並ぶ中、私が目を離せなくなったのが、最寄りのバス停の真横に鎮座している「水掛け不動尊」。

北海道であまり水掛け不動さまは聞かないな…と感じながらひょいっと覗き込んでみると…

そこには、びっくりするくらい、びっしりと緑の苔むしたお不動さまがいらっしゃるではありませんか!!

お顔やお身体の原型がもはや見えないほどの厚み、まるで高級なグリーンの絨毯に包まれているかのよう。

北海道は梅雨がなく、本州に比べれば湿度があまりないのが気候的特徴としてあげられます。苔自体も比較的珍しい存在と言えますが、目の前のお不動さまの苔のパワー、凄まじいと言えましょう。それだけたくさん水を掛けられている証拠。

お不動さまの由来に関して、掲示が出ていましたので拝見してみれば、起源は大阪難波の法善寺。不動尊の患部に、自分の身体の部分になぞらえて水をかければ、不調の部分が治るとの言い伝えがあったとのこと。

そのお不動さまを起源として、札幌にもこれだけ見事な水掛け不動がいらっしゃるのです。
これは知りませんでした。

しかもロケーションはバス停の目の前。
伽藍に入らずとも誰でも柄杓から水をかけることができるようオープンな空間に佇んでいるのも印象的。

あの苔むした様子には「祈る力」のパワーが宿っていると感じた次第。

静かな迫力に感激し、しっかりお参りしたあとは、さあ世界一のおりんを拝見。

大乗院薬王寺の大鏧(だいきん…大型の鉢)は世界一の大きさと言われています。

直径2.4メートル、高さ2.1メートル、重さは3トンに及ぶとのこと。

一度鳴らせば1分30秒は細かく振動し続け、馴染みのお檀家さんの中には、鳴らした大鏧に体をくっつけその振動を全身で感じる方もいらっしゃるとのこと。

期待をこめてお堂に足を運べば、まさしくおりんをそのままドラえもんの「ビッグライト」で大きくしたような存在感、迫力。

鐘といえば釣鐘型がお馴染みだと思いますが、そうではないこの不思議さ。

だれでも鳴らすことができるというので、お言葉に甘えて、思い切って鐘撞棒を握り鳴らしてみると…あ、しかもこちらの棒も巨大な「りん棒」を模した形になっている徹底ぶりなのですよ。
天井も華やかに彩られ、視覚的にまずワクワク感が盛り上がります。

さあ、いざ、世界一のおりん、どんな響きなのか。

一般的な鐘の音のイメージが、ゴォーンだとすれば一段階も二段階も低い、地の底から内臓にその振動がじわじわと広がっていくかのような「…ゾーン…!!」という唯一無二の響き。
ドーンでもズーンでもないのです。

かつてどこでも聴いたことのなかった音の広がりと低音、そしてあまりの大きさに、大鏧を鳴らした瞬間思わず驚愕の表情を浮かべてしまった私。

自分より大きな存在に全身を包まれ圧倒されるような、まさしく五感で認識する宗教体験がそこにはありました。音の波に圧倒される感覚。

純粋に、自然と手を合わせたくなるような不思議な空気の流れがそこにはあります。

大乗院、地蔵堂には多くのお地蔵さまがならび、入り口には仁王像がたたずみ、視線をあちこちに向ければさまざまな仏像が。

苔むしたお不動さまと、全身で「音波」を感じられる世界一の大鏧は、これまでにはなかった、視覚だけではない仏教寺院体験を味わわせてくれます。

唯一無二の時間をぜひ、札幌宮の森で体感してみてください。

アンヌ 遙香(あんぬ・はるか)
元TBSアナウンサー。現在は故郷北海道を拠点に、フリーアナウンサー、文筆家として活動。STV「どさんこweekend」メインMCなど。北海道大学大学院博士後期課程にて日本映画におけるジェンダー表象を研究中。
Instagram:@aromatherapyanne

 

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