山笑う頃、風薫る頃、鉄路沿いには心躍る風景が広がる。車窓から花景色を望み、花の名所を巡る。群馬県~栃木県 のわたらせ渓谷鐵道では花桃を楽しめる。時期は3月下旬〜4月上旬。

渓谷沿いを列車が向かうは桃源郷。枝垂れ花桃が咲く「小夜戸・大畑花桃街道」へ

線路脇で咲き誇る花桃は約300本。車窓一面がピンクに染まるとトロッコ列車の車内が沸き立つ。神戸(ごうど)駅付近。写真/中井精也

わたらせ渓谷鐵道は、桐生駅(群馬県)と間藤駅(栃木県)を結ぶ44.1kmの路線だ。国鉄足尾線を前身とするが、元は足尾銅山からの鉱物や物資の運搬用に敷設された足尾鐡道がルーツである。

昭和48年(1973)に足尾銅山が閉山されると、足尾線の輸送量が大幅に減少し廃止の対象になるが、存続運動が起き路線が守られた。現在は第三セクターのわたらせ渓谷鐵道が経営を引き継ぎ、観光路線として人気を集めている。

社名の通り、列車は渡良瀬川に沿うように走り、上流に行くほどに車窓に渓谷の清流を映すようになる。

この路線では、週末と休日を中心に「トロッコわたらせ渓谷号」が運転されているので、窓のないトロッコ列車に乗ると、渓谷を渡る風を直接感じることができる。春になると渓谷美に加え、沿線の花桃が乗客を迎えてくれる。

鉄道写真家の中井精也さんは、見どころをこう語る。

「間藤駅に向かう下り列車に乗ると、神戸(ごうど)駅の付近から花桃が咲き誇る中を列車が突き進みます。その手前の上神梅駅の八重桜も見事で、花の絶景が続く路線です」

花輪駅で下車して15分ほど歩くと「枝垂れ花桃」が咲き乱れる「小夜戸・大畑花桃街道」に着く。地元の人が育てた2000本以上の花桃の並木が約2kmも続く、山里の桃源郷である。

「小夜戸・大畑花桃街道」の花桃は、通常1本の木に白か桃色のどちらかの花が咲くが、なかには2色混じって咲く木もある。写真/みどり市観光協会

駅直結の天然温泉で憩う

帰途は水沼駅近くのリゾート施設「水沼ヴィレッジ」に立ち寄って、天然温泉(駅の天然温泉 水沼の湯)で汗を流し、十割蕎麦に舌鼓を打つのもいい。温泉は水沼駅に直結しているので、途中下車して次の列車まで温泉で憩うことも無理なくできる(入浴料1350円〜、入湯税込み)。

香り高く、喉越しのよい十割蕎麦

水沼ヴィレッジで打ちたての十割蕎麦をいただく。写真は揚げたての天ぷらが付く「囲炉裏特選 十割そば御膳」(2200円)。蕎麦のおかわりは無料。
十割そば囲炉裏
群馬県桐生市黒保根町八木原宮原264サウナの森 水沼ヴィレッジ内
電話:0277・32・4411 営業時間:11時~16時 定休日:不定
交通:わたらせ渓谷鐵道水沼駅より徒歩約7分

案内人/中井精也(なかい・せいや)さん(鉄道写真家)

鉄道車両のみならず、鉄道にかかわるすべてのものを独自の視点で撮影。現地に吹く心地よい風が伝わってくるような「ゆる鉄」というジャンルを確立。著書に『ゆる鉄絶景100 中井精也写真集』など多数。

取材・文/宇野正樹 撮影/齋藤 明

 

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