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ライターI(以下I):さて、『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』)第11回では、平賀源内(演・安田顕)のエレキテルが登場しました。これは、静電気を発生させる摩擦起電器ということですが、源内が発明したわけではありません。源内は長崎に遊学した際に外国産の中古のエレキテルを持ち帰り、修理したといわれています。原理などを特に学んだわけでもない源内が、独学独力で修理を貫徹したのがすごい! といわれているわけですね。
編集者A(以下A):史実では源内は、これを見世物にと考えたようです。実際に源内宅を田沼意次(演・渡辺謙)の関係者(妾とも)が見学に訪れたといいます。源内の長崎遊学には田沼意次もかかわっているので、お忍びで意次も見に来たのではないかと空想できます。
I:源内と意次の関係を考えると、なきにしもあらずという展開ですね。
A:源内はエレキテルを大名屋敷に持参して「お披露目会」を行なって謝礼をいただくなどちゃっかりした側面もみせていたそうです。さらに、この装置が病気の治療に有効という可能性を信じていたようですね。
I:ところで、源内がかかわったとされるエレキテルは、現在も2台ほど残されているといいます。そのうちの1台が香川県さぬき市の「平賀源内記念館」に蔵されているとのことです。
A:なんだか、こういう機会でもないと足が向かないので、源内がドラマに登場しているうちに訪ねてみたいですね。今後『べらぼう』劇中で平賀源内がどういうふうに描かれてくるのかものすごく興味深いです。
I:あ、それは私も楽しみにしています。異才平賀源内の生涯を『べらぼう』制作陣がどう着地させるのか――。めちゃくちゃ注目ですよね。
A:平賀源内の生涯を振り返って、惜しいのは、源内の活動が多岐にわたりすぎて、エレキテルの「研究」も道半ばで終わったことです。戯作や鉱山開発、小説にキャッチコピー、そしてエレキテル。何か1本に絞っていればと思わずにいられません。
I:源内のことをマルチクリエイターと称賛したりしますが、もう少し的を絞っていればということですね。でもそうはできない、興味の赴くままに動く人だったんだろうな、と思います。
A:源内のエレキテルのことを考えると、いつも田中久重のことが頭に浮かびます。源内の没後およそ20年後に生を受け、精緻なからくり人形を製作し、幕末にはミニチュアですが蒸気機関車の模型を試作し、後の東芝の前身会社の設立にかかわった偉人です。
I:田中久重がつくった「万年自鳴鐘」は、2005年の「愛・地球博」にあわせて精緻なレプリカが製作されました。なんだか、そのニュースは、はっきり覚えているんですよね。田中久重は寛政11年(1799)生まれですが、長命で明治まで生きていたんですよね。もし、源内の誕生がもう少し後だったら、源内も現代に通じる会社の設立にかかわったりしたんですかね?
A:ついつい源内の「If(イフ)」を考えてしまいますよね。
●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ べらぼう 蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり
