
関西から西日本では、一般に肉といえば牛肉を指す。神戸の『老祥記』で豚饅頭(ぶたまんじゅう)と名付けられたのも、そんな理由があったのだろう。福岡県・博多を代表する料亭『稚加榮(ちかえ)』で人気を博しているのが、西日本らしい肉まん、「和牛肉まん」である。もともと包子は、小麦粉を練り、発酵させた生地で肉や野菜、海老などの餡を包んで蒸したもの。懐の深い料理なのだ。

「この肉まんは、2代目が発案して、10年の歳月をかけ完成したものです。和牛の部位や野菜とのバランスなどを細かく変えて何度もレシピを作り直しました」
そう語るのは、総料理長の平山克浩さん(59歳)。料亭の隣で営んでいた洋食レストランで人気だった「焼き肉」の秘伝のタレを、ほかの料理にも生かしたいと考案された。九州産の和牛を細かく切り、キャベツや筍、椎茸などの野菜を合わせた深い旨みの餡。醤油ベースの甘めのタレが、和牛の肉感、上質な脂の味を引き立て、風味を倍増する。店内では注文が入ってから蒸籠で蒸し上げてくれる。
九州巡業で福岡を訪れる力士など多くの食通に愛されてきた料亭の、洗練された肉まんである。

稚加榮
住所:福岡市中央区大名2-2-17
電話:092・721・4624
営業時間:11時30分〜15時(土曜・日曜のみ)、17時〜22時(日曜は〜21時)
定休日:不定(2025年2月より毎月第3月曜)
交通アクセス:地下鉄赤坂駅下車、徒歩約5分
取材・文/中井シノブ 撮影/松隈直樹
