昨今、さらなる高まりを見せるジャパニーズウイスキー人気。その流れを受けて日本各地のバーでもジャパニーズウイスキーに注目し、様々な形でセレクトを強化しつつある。ここからは、オーセンティックな老舗から新規開店に至るまで、ジャパニーズウイスキーを心ゆくまで満喫できるバーを紹介する。
フランク・バー(静岡・沼津)

静岡県沼津市の人口は約18万5000人。ここに20軒以上のバーが点在し「バーの街」とも称される。地方都市の沼津でなぜバーが発展したのか。1967年創業の『フランク・バー』のオーナー、相原勝さん(82歳)はこう語る。
「沼津は“海の軽井沢”と呼ばれる保養地でした。かつては皇室の御用邸があり、財界人たちの別荘が多く建てられました。そういう人たちの社交の場としてバーが発展してきた歴史があります。まあ、単にのんべえが多いという説もありますが(笑)」
『フランク・バー』は沼津の数あるバーの中で、オーセンティック(正統)なスタイルを守る代表格だ。急カーブを描く階段を上ると、長いバーカウンターが目に飛び込む。ブビンガという、アフリカ原産の材を使った一枚板の長さは8mほど、表面に凹凸が彫り込まれ、手のひらから心地よい感触が伝わる。
静岡に名ウイスキーあり

マスターの相原さんは創業以来58年間、カウンターの中に立ち続けてきた。客は県内と県外で半々くらいだという。沼津に名バーありと、評判を聞きつけた遠来の客も少なくない。
「お客さんからよく、静岡には何かあるの? と聞かれます。そんなとき、こんなウイスキーが静岡で造られているんですよ、とご紹介することがあります」
そこで相原さんに、静岡県内の蒸留所で造られたジャパニーズウイスキーを選んでもらうことに。うーんと考え込みながら、棚から出したり戻したりしながらの厳選の3本である(画像下)。

「富士御殿場蒸溜所はシングルグレーンの『富士』。3種のグレーン原酒をブレンドして豊潤な味わいです。井川蒸溜所は2024年に初めてシングルモルトを発売しました。これからどんどんいいウイスキーが出てくるでしょう。そしてガイアフロー静岡蒸溜所。ここはシングルモルトの『S』がバランスがよくおすすめです」

静岡産のウイスキーをいただきながら、相原さんに、どうしてバーテンダーになったのか聞いた。
「若い頃、新聞を読んでいたら〈亡くなった人が最後に話したのがバーテンダーだった〉と書かれていたのです。バーテンダーとはそんな職業なのかと、感じ入ったのが始まりです」
そしてバーの役割をこう語る。
「バーはただお酒だけでなく空間を提供しています。そこで自分の時間を持つことで、人間の胆力が回復できる、そんな場所でありたいと思っています」
60年近くカウンターを挟んで人を見つめてきた、相原さんの眼差しは温かだ。

フランク・バー

静岡県沼津市大手町2-11-17
電話:055・951・6098
営業時間:18時〜翌1時
定休日:日曜
交通:JR東海道線沼津駅より徒歩約7分
※2026年サライ3月号より












