不透明な時代が続いていることも理由なのか、神社の参拝をする人が増えている。2025年1月、伊勢神宮(三重県)は正月三が日の参拝者数が約41万人だったと発表。これは2024年より10%以上増えているという。厳島神社(広島県)も参拝客が増え、本殿まで2時間待ちだったという報道がされた。このように、有名で観光地でもある神社は人が集まるが、無名だと護持運営さえ難しいケースもあるという。

啓一さん(64歳)は「不動産関連会社の定年後、地元の小さな神社でアルバイトしており、年々、参拝客は減り続けいることを感じます」という。

28歳で年収1200万円だったバブル崩壊前夜

啓一さんがアルバイトをしているのは、宮司夫妻が護持運営している地元の小さな神社だ。定年後週3回ほど朝7時から、12時まで掃除や境内整備の手入れの手伝いをしているという。

「1回行けば5000円をもらえて、月に5万円を得ています。無償で働く氏子さんとは異なり、僕のようなアルバイトは“助勤奉仕”という立場。早起きできるし、体を動かすし、定年後のいい仕事だと思っています」

そんな啓一さんは、かつては金と欲にまみれた生活をしていた。

「大学卒業後、怪しげな不動産を売って大金を稼いだり、広告の営業をしたりしていました。家族がいるわけでもないから、人生の終盤で神様に出会えて、本当に良かった」

啓一さんは名門大学卒だが、2回留年して「やっとのこと」で卒業したという。

「留年の理由は、麻雀。当時、街にはどこにも雀荘があって、学生や商店主、サラリーマンたちが昼から打っていたんです。僕は勝負運がいいから、印刷所の社長の代打をして、大勝ちし2万円もらったこともありました。当時“学生さん”というのは、大人から甘やかされていた。余裕がある時代だったんですよね」

卒業したのは、畳屋を営んでいた両親から「大学は出てくれ」と泣かれたからだ。

「父は元から僕に畳屋を継がせる気などなかった。だから勉強しろとうるさく言われましたよ。父は曽祖父が苦労して立ち上げた店を畳むとき、“ご先祖様に申し訳ない”と繰り返していた。先祖が立ち上げた商売を廃業するのは精神的な負担が大きい。父が64歳でがんで亡くなったのも、廃業ストレスが原因だったと思うんです」

息子には苦労させたくないと、父は1960年生まれの啓一さんに別の人生を提示した。啓一さんは、日本の経済成長とともに成長する。社会に出た1984年はバブル前夜。仕事はどこにでもあったという。

「新宿の雀荘で知り合った、不動産関連事業を立ち上げた社長から、ウチで働けと言われたんです。当時40歳の社長は、六本木と市ヶ谷の狭い土地に、鉛筆みたいに細いワンルームマンションを建てて、売るという。現地を見たら“誰が住むんだろう”と思う物件ですよ。だって、6畳にキッチンから風呂まで詰め込んだ狭いワンルーム。でもそれが驚くほど売れたんです」

居住用ではなく値上がりした頃合いを見て売る、投資用物件だ。

「なんの愛着も湧かないようなヘンテコなマンションが売れる。そして半年後に“1.5倍の値段になりました”とお礼の連絡が入るんです。思えばあれはバブル経済の始まり。他にも営業代行の仕事がどんどん入ってきて、当時僕は28歳でしたが、月に100万円くらい稼いだこともありました」

【激怒した彼女がスパゲティを鍋ごとぶちまけ、大やけどを負う……次のページに続きます】

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