字画も少なく、しょっちゅう⽬にする簡単な漢字。読めそうなのに、いざ声に出して読もうとすると、正しく読めるかどうか⼼配になって、思わず声を細めてしまう漢字ってありませんか? サライ世代ともなりますと、いったん思い込み認知をしておりますと、なかなかイニシャライズ(初期化)が難しいですよね。
簡単な漢字であっても、脳トレ漢字の記事を読みながら確認学習をしていただくことで、思い込み認知をイニシャライズできる機会になると思います。
「脳トレ漢字」第225回は、「反故」をご紹介します。よく使われる言葉ですが、実はかなり古い歴史を持っているのです。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「反故」とは何とよむ?
「反故」の読み方をご存知でしょうか? 「はんこ」ではなく……
正解は……
「ほご」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「書きそこなったりして不要になった紙。ほご紙。ほうご。ほぐ。」「役に立たなくなった物事。」と説明されています。「約束を反故にする」などのように使われることが多く、「撤回」「破約」「白紙に戻す」などが類義語として挙げられます。
現在では「ほご」という読み方が一般的ですが、かつては「ほうぐ」「ほんご」「ほうご」など、様々な読み方があったそうです。また、「反故」のほかに「反古」と表記されることもあります。
「反故」の漢字の由来は?
「反故」に使われている「反」には、「ひっくり返す」という意味があり、「故」には「古い」という意味があります。紙が貴重品だった時代は、書き損じたものを裏返して使っていたとされ、「反故紙(ほごがみ、ほごし)」と呼んでいました。
これが転じて、「駄目にする」「撤回する」という意味になったと考えられます。
読み方の変遷
「反故」は古い歴史を持つ言葉で、奈良時代の正倉院文書には「本古紙」「本久紙」と表記されています。また、平安時代初期の説話集『霊異記』には「本垢」と表記されているそうです。このことから、当時は「ほご」のほかにも、「ほぐ」や「ほんく(ぐ)」と読んでいたのではないかと考えられています。
慶長8年(1603)に刊行された『日葡(にっぽ)辞書』には、「Fongo(ホンゴ)」の項に「Fôgu(ホウグ)」と発音される」という説明が見られるため、この時代は「ほうぐ」という読み方が最も一般的だったと考えられます。
その後、江戸時代に入ってからは「ほうぐ」のほかに、「ほうご」「ほんご」「ほご」「ほんぐ」「ほぐ」など、様々な読み方が用いられていたそうです。年代や地域によって違っていたのかもしれませんが、一つの言葉にこれだけたくさんの読みがあったのは驚きますね。
また、明治・大正期の国語辞典の多くは、「ほぐ」という読み方を最初に紹介しています。現在、私たちが使っている「ほご」という読み方が一般的になったのは、割と最近のことなのです。
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いかがでしたか? 今回の「反故」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 時代とともに、言葉は移り変わっていきます。もしかすると、100年後には全く違う読み方に変わっているかもしれませんね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB
参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)
『世界大百科事典』(平凡社)