引退後は孫と多くの時間を過ごしたい、と考える人は多いでしょう。孫の存在とその成長ぶりは、間違いなく人生後半の喜びの一つです。
とはいえ、孫がちょっと遠くに住んでいて、なかなか会えないというケースも少なくないでしょう。そんな場合、孫の近くで暮らしたいと引越しを考えている人もいるかもしれません。でもその判断は、いったいどうなのでしょう?
米国カリフォルニア州立大学・心理学部教授のケネス・S・シュルツ氏監修の『リタイアの心理学 定年の後をしあわせに生きる』(日経ナショナル ジオグラフィック社)を参考に、遠くに住む孫との絆づくりのヒントについてお伝えしていきましょう。
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孫の近くで暮らすことの長所と短所とは?
まず、孫の近くで暮らすことには、長所と短所があります。
長所はもちろん、孫の日々の成長を見ることができ、子守をすることで息子や娘の力になってやれること、また感謝されること。いずれ配偶者を亡くして一人になったとき、孫だけでなく愛する家族に支えてもらえるのも、ありがたいものです。
それに対して短所は、近所の付き合いなど現状の関係が途絶えてしまうこと、そして頻繁に子守を任されることで体力や時間を使い、とはいえ子守を止めることもできすに自分を追い込んでしまうこと。さらに義理の息子や娘と性格が合わない場合は、近くにいることで対立を悪化させてしまうという恐れも考えられます。
子供たち家族が予定外の転勤になったり、離婚するなど、万一のケースもあり得ます。孫の近くへの引っ越しは、くれぐれも慎重に決断すべきです。
また、孫たちが遠くにいてあまり会えないからといって、繋がりが保てないかというと、そうではありません。
心理学でいう「愛着」の強さは、一緒に過ごす時間に比例しないことがわかっています。子供は自分が表現する欲求に確かな形で応じてくれる人に愛着を覚える傾向があるので、たまに一緒にいるときに、きちんと孫の感情に寄り添い、信頼できる姿を見せることで、きちんと絆は深められるのです。
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以上、遠方にいる孫との絆を築くためのヒントについてお伝えしました。
そして、孫がいない人も気落ちしないことです。英国の調査では、孫の存在は人生の満足度にさほど影響しないという結果が出ています。孫がいない人は、それ以外の喜びに目を向けるようにしましょう。たとえばペットを飼うというのも、悪くない選択でしょう。
【参考文献】
『リタイアの心理学 定年の後をしあわせに生きる』
(S・シュルツ監修、藤井留美 訳、日経ナショナル ジオグラフィック社)
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/product/16/010500050/
文/庄司真紀