さあ、新しい年の始まりである。一年の目標を新たに掲げた人も多いのではないだろうか。
筆者の数年来の目標のひとつに、「金継(きんつ)ぎ」の技法の腕を磨くことがある。金継ぎとは、欠けたりひびが入ったりした器を補修する技術のこと。学び始めたばかりの頃、日本が誇る優れたこの技術は、一般の人々にあまり知られていないことに驚くばかりであった。
そもそもどのようにして破損した器を補修するのか、簡単に説明しよう。
例えば、割れた器の場合、漆を接着剤にして破片を接合させる。欠けた器は、漆を配合したパテを欠損部分に埋め込む。こうした工程は、いずれも漆芸(しつげい)の技術だ。
漆は乾くのに非常に時間を要する。作業しては乾かす、作業しては乾かす……という繰り返しを経て、最終的には「蒔絵(まきえ)」と同じ手法で、補修した部分に漆で下書きし、金粉を塗布する。こうして、偶然の破損が生み出した曲線を金で浮き立たせ、新たなデザインとして楽しむのだ。
このような補修技法の起源は、縄文時代にまで遡(さかのぼ)るという。その頃に使われていた土器も、壊れた場合に漆で継ぎ合わせていたことが判明している。補修部分に金を蒔(ま)くようになったのは、室町時代。茶の湯が盛んになったことを背景に、金で継ぐことで器の格を上げ、補修部分を「器の景色」として楽しむ文化が生まれた。
金継ぎは、時間がかかる。しかし、自分で手をかけて直した器は、愛着もひとしお。骨董屋などで欠けた酒器を入手して、手をかけて継いでみるのも一興。確実に、旨い酒が楽しめることを約束する。
写真・文/大沼聡子
※本記事は「まいにちサライ『食いしん坊の味手帖』」2014年1月6日掲載分を転載したものです。