精神科医の和田秀樹さん(63歳)が高齢者の新たな可能性について綴った『シン・老人力』(www.shogakukan.co.jp/books/09389117)。読めば勇気と元気がわくと話題の同書から、高齢者がいつまでも若々しく自分らしく生きるために、「口グセ」にしてほしい言葉について、和田さんが紹介します。
文/和田秀樹
自分の過去を肯定する
人間は長所より短所に目がいくものです。放っておけば「悪いこと」ばかり目についてしまいます。
歳を重ねれば重ねるほど、心身の衰えの影響などもあり、なおさら短所に目がいきがちです。
それを避けるためにも「頑張ってきたな」と過去の「いいこと」に、意識的に目を向けることも重要です。
具体的に、自分の過去の「いいこと」を紙に書き出してみてもいいでしょう。
これはうつ病などの精神療法(認知療法)でもしばしば用いられる、効果的な方法です。今のあなたにはどんな「いいこと」が、どのくらいあるでしょうか。
「ほどほどに健康である」
「持病はあるけれども一病息災」
「定年退職して退職金がある」
「小さいながら持ち家で、ローンも完済した」
「学生時代からの親友がひとりいる」
「子どもが2人いる」
「料理が得意」
「自分も満更ではない」と思える
もっとあるでしょう?
「車を所有している」「大卒である」「仕事を通じてそれなりの知識や人脈もある」といったことを忘れていませんか?
個人的な「いいこと」も挙げましょう。
「話し好きである」「歴史小説が好き」「ゴルフのハンディは14」「人づきあいがいい」「禁煙して30年」など。
今まで気づかなかったことや、とくに「いいこと」とは思わなかったこともリストにしてみると、「自分も満更ではない」と思うようになるはずです。そう思えたら、すでに「いいこと」が起こっています。
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和田秀樹(わだ・ひでき)
精神科医。1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は川崎幸病院精神科顧問、ルネクリニック東京院院長などを務める。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。著書に『80歳の壁』『70歳が老化の分かれ道』など多数。