ライターI(以下I): 第12回は、今川氏真(演・溝端淳平)と正室の糸(演・志田未来)の物語になりました。糸は小田原の北条氏康の娘で、甲斐相模駿河三国の軍事同盟の一端を担う政略結婚になります。
編集者A(以下A):糸は俗に早川殿と称される女性です。婚家の今川家が桶狭間合戦以降に没落し、実家の北条家も後に豊臣秀吉に滅ぼされるというWの悲劇に見舞われた女性です。せめてもの救いといえば、生涯、氏真と添い遂げたことでしょうか。
I:氏真と早川殿(糸)は仲睦まじい夫婦だったといわれていますが、劇中では氏真に〈足手まとい〉といわれていました。
A:逃避行の最中の発言です。心身ともに混乱していた、というふうに考えてあげてほしいです。この場面、糸の実父である北条氏康は、自分の娘が徒歩で逃げざるを得なかったことに対して激怒したくらいの混乱ぶりだったそうですし。いくら政略結婚だったといっても娘を思う親心は今と変わらないのですね。同様に、氏真と糸が結婚する場面で、今川家臣らが〈もらい手がなかったらしい〉とか〈若君が気の毒だ〉と話していたのは、「しょせん、人の噂とはそんなもん」と解釈しました。
I:人の噂ほどいい加減なものはない、という戒めを描いたということですね。さて、その糸役の志田未来さんからコメントが寄せられました。志田さんは、糸役が大河ドラマ初出演になるそうです。
氏真に出会った頃は、糸自身、足が悪いこともあり、氏真の足を引っ張らないように一生懸命付いていこうと必死だったと思います。劣等感などから自暴自棄になっていく氏真と共に過ごすことで、氏真を支えたいという気持ちが日に日に大きくなっていったのだろうと感じました。ただひたすら見守るというのは、強くなければできないと思うので、秘めた芯の強さを持つ女性だと思います。
【志田未来さんが大河初出演。次ページに続きます】