「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。
コロナ禍以降、性感染症患者が増えている。特に梅毒の感染者数は深刻だ。2022年の報告数は8456人に達し、1999年以降23年間で過去最多を更新。特に中高年は妊娠する可能性が低いため、性交の際に避妊具を使用しない傾向がある。これが拡大の一因ではないかとも考えられる。
東京近郊の海辺の街に住む有希さん(54歳・専業主婦)は、友人・鈴子さん(家事手伝い・54歳)が、「私の夫(57歳)に性感染症をうつしたのではないか」と考えている。
幼なじみ同士の再会で結婚
有希さんは肩書こそ専業主婦だが、夫のサポート、女性のためのライフスタイルアドバイスなど、さまざまな活動を行っている。その活動の中で、鈴子さんに再会する。
鈴子さんは有希さんの公立中学時代の友達で、小学校時代からその美貌で芸能界にスカウトされる。その後、アイドルデビューするも鳴かず飛ばず。結婚と離婚を何度かして、50歳のときに実家に戻って来た。スーパーマーケットで再会し、自宅に呼びお茶をするうちに、キャリアも貯金もない鈴子さんの再就職を手伝うようになる。
「両親が経営者だったから、人の役に立ちたい、世の中を明るくしたいという気持ちが強いのかも。夫とも、県立高校(名門)のボランティアサークルで出会ったしね。彼が3年で私が1年のときだったかな」
夫とは親が会社を経営しているという共通点があった。
「私が高校2年のときに、卒業生も含めたサークル仲間を集めて、ウチでクリスマスパーティをしたんです。その時に、彼が“俺、小さい頃、ここに来たことがある”と言うんです。母を呼ぶと、“あら! ケンちゃん!”と驚いていました」
彼の母親と、有希さんの母親は親しかった。お互いの家を行き来しており、幼い有希さんは彼のことを「ケン兄」と慕い、金魚のフンのように追いかけていたのだという。
その後、小学生に上がると、彼は野球やピアノ、学習塾など多忙になり、疎遠になっていく。
彼も「あのユッキーが、有希とはね」と驚いていたという。
そして、当然のように、ユッキー・ケン兄と呼び合うカップルが誕生する。東京の名門私立大学に通う彼は、有希さんに勉強を教え、有希さんも第一希望の女子大学に入学。学校同士が近いので、デートもしやすかった。
「お互いに男女交際はオクテだったから、実際に体を重ねるのがとても怖かった。でも彼は私の気持ちが整うのを待ってくれて、私が19歳、彼が22歳のときに、本当のカップルになったんです」
その後、彼は名だたる有名企業の内定を蹴り、当時海千山千だった外資系のIT関連会社に就職。この決断を後押ししたのも有希さんだった。最初は苦労したものの、その会社はグローバル規模まで成長する。
「私が27歳、夫が30歳のときに結婚し、一男一女が生まれました。夫の仕事が忙しく、当時は産休も育休もないから、私は勤めていた製薬会社を退職。今でこそ“豊かでいいわね”と言われるけれど、それまでにホントに苦労がありましたよ」
【社会全体がよくなることを考えて生きてきた……次のページに続きます】