ふるさと納税を寄附すれば、所得控除の1項目である寄附金控除が適用されます。寄附金控除額は、寄附金の一部が所得税及び住民税から控除されます。しかし、ふるさと納税の場合、原則として寄附額から自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象です。つまり、ふるさと納税で寄附した分だけもともと納めるべき税金が少なくなります。そのため地方自治体から受け取れる返礼品が2,000円以上の価値があれば、その分だけ得をすることになるのです。

ただし、寄附したふるさと納税が際限なく税金から控除されるわけではありません。ふるさと納税をすることで損をしないためには、上限額(以下「限度額」)を超えない金額で寄附することがポイントとなります。

そこで今回は日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税務申告のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、ふるさと納税の限度額を確認するための計算式についてご紹介いたします。

目次
ふるさと納税で限度額を確認する方法とは?
限度額をシミュレーション
限度額を超えた場合はどうなる?
まとめ

ふるさと納税で限度額を確認する方法とは?

ふるさと納税における寄附金の控除額は、以下(1)から(3)の合計額で計算し、それぞれに異なる限度額が設けられています。

では、ふるさと納税額の限度額は(1)(2)(3)全ての限度額を考慮すべきかどうかというと、そうではありません。実際は、(3)の限度額を超えなければ、(1)と(2)の限度額を超えることはありません。そのため、ふるさと納税の限度額を計算するうえでは、(3)の限度額のみ考えればよいことになります。

(1)所得税の控除
(2)住民税基本分からの控除(以下「基本分」)
(3)住民税特例分(以下「特例分」)

なお、特例分の控除額は(ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 住民税の基本分の税率 - 所得税の税率)で計算されます。所得割額の20%を限度額と定められているため、ふるさと納税額が限度額を超えないためには、以下の計算式が成り立ちます。

(ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 基本分の税率 - 所得税率)※1 ≦住民税所得割額 × 20%※2

※1 特例分からの控除額
※2 特例分の限度額

所得税率について

所得税率は「課税される所得金額」(以下「課税所得金額」)によって決定され、課税所得金額は合計所得金額から、15項目ある所得控除を差引いた金額で算出されます。合計所得金額は、10の所得をすべて合計した金額です。所得はそれぞれ求め方が異なりますが、会社員の給料は給与所得に分類され、給与収入から給与所得控除を差し引いた金額が給与所得となります。

なお、課税所得金額に応じて決定される税率は「国税庁 所得税の税率」、給与所得控除は「国税庁 給与所得控除」、所得控除は「国税庁 所得控除のあらまし」をご参照ください。

住民税の基本部分の税率について

住民税の税率は、基本的には10%です。

住民税所得割額について

住民税の課税対象額 × 10%(基本分の税率)で求めた金額になります。住民税の課税対象額については、所得税と同様に合計所得金額から所得控除を差引いた金額で算出されます。ただし、所得税と住民税とでは所得控除のための申告は同じでも、受けられる控除額が異なる場合があるので注意が必要です。例えば、基礎控除は合計所得金額が2,400万円以下の場合、所得税48万円に対して住民税は43万円となります。

以上でふるさと納税の限度額を確認することは可能です。地方自治体の返礼品等を紹介しているふるさと納税のポータルサイト等で、定められた金額を入力すれば自動的に限度額が計算表示されるものもありますので、参考にするとよいでしょう。

限度額をシミュレーション

限度額の計算式がわかったら、実際にシミュレーションをしてご自身の1年間の寄附額を算出してみるといいでしょう。事前準備する書類とともに具体的なシミュレーション結果の一例をご紹介いたします。

計算する前に用意しておくもの

以下の書類は、寄附を検討している年の前年のものになるかもしれません。しかし、前年と今年で所得や控除に大きな変動がない場合や、おおよその限度額を知るうえでは有効な書類となります。

・源泉徴収票

会社員や公務員に対して、1年間に支払った所得税の金額や1年間に支払われた給与の合計金額、所得税の所得控除額を確認することができます。

・税額決定通知書

自治体から発行される通知書で、住民税の所得割額を確認することができます。

限度額のシミュレーション

例)年収600万円独身の会社員の場合(給与以外の所得なし、社会保険料と基礎控除以外の控除なし)

1)所得税率を求める。

(1)合計所得金額:6,000,000(年収)- 1,640,000(給与所得控除額)= 4,360,000円

(2)所得控除額:480,000(基礎控除)+ 900,000(社会保険料控除)※3 =1,380,000円

※3 社会保険料控除は社会保険料が年収の15%と仮定した場合

(3)課税所得金額:4,360,000円 -(2) = 2,980,000円

課税所得金額2,980,000円の所得税率は10%となります。

2)住民税所得割額を求める。

(1)合計所得金額4,360,000円… 1)(1)と同額

(2)所得控除額:430,000(基礎控除)+ 900,000(社会保険料控除)= 1,330,000円

(3)住民税の課税対象額:4,360,000 -(2)= 3,030,000円

住民税所得割額は303,000円(3,030,000 × 10%)となります。

3)ふるさと納税の限度額を求める。

(ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 10% - 10%)< = 303,000円 × 20%

ふるさと納税額 < = 60,600円※4 ÷ 80%※5 + 2,000円となり、ふるさと納税額は約77,000円(千円以下切り捨て)です。これがふるさと納税の限度額となります。

なお、ふるさと納税の限度額は実際には復興特別所得税という税率が加算されるため、千円前後限度額が増えます。しかし、多くのふるさと納税額1口あたりの金額が1万円以上であることや、計算式が上記よりも複雑となるので、ここでは考慮せず限度額計算を行っております。

※4 303,000円 × 20%
※5 100% - 10% - 10%

限度額を超えた場合はどうなる?

ふるさと納税は寄附額から2,000円を除いた全額が、寄附金控除として所得控除されます。しかし、その上限を超えてしまうと、超えてしまった分については後で納めるべき税金から戻ってくることはありません。よって、上限を超えた分だけ自己負担額が増えることになるため、適正な限度額を計算することは非常に重要です。

まとめ

ふるさと納税で寄附する額は、住民税特例分からの控除が住民税所得割額の20%を超えない金額になるようにすれば、2,000円の自己負担額以外の負担額は発生しません。ふるさと納税の限度額は、ご自身の所得や控除が増えれば増えるほど計算することが複雑になります。

返礼品等を紹介している会社などのふるさと納税のポータルサイトの他、「総務省 ふるさと納税ポータルサイト」に全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安が掲載されていますので参考にしてみるとよいでしょう。

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

 

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