取材・文/ふじのあやこ
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、そのときに感じた率直な思いを語ってもらう。
今回お話を伺った愛花さん(仮名・35歳)は現在独身で、結婚願望もなく結婚する予定はないとのこと。その理由については言葉を濁しつつ、愛花さんは母親と義父の話をします。
「自分が結婚しているイメージができないんです。誰かと一緒に暮らすことも、家族になることも、自分に子どもができることもイメージできない。仲が良い夫婦というものを知らないんです」
新しい父親はすぐに単身赴任生活。一緒に過ごす時間はほとんどなかった
愛花さんは埼玉県出身で、両親との3人家族。実父は愛花さんが小学校に上がる前に離婚していなくなります。そして、11歳のときに母親が再婚して義父ができたと言います。
「実の父親のことはよく覚えていません。いないことのほうが普通だった感じです。今の義父と母親は、私が11歳のときに再婚したのですが、それより以前から母親には付き合っている人がいるんだろうなってなんとなく思っていたので、特に驚きもありませんでした。
なんとなく……とは、すごく嫌な思い出で残っているんですが、母親に女っぽい雰囲気がするというか、生々しい感じがしたんです。言い方を間違えているかもしれないですが、そんな母親が気持ち悪かった。だから再婚して、相手がいることを、これからは変に隠されずにすむんだってホッとしました」
当時すでに母方の祖父母は亡くなっており、祖父母の家に母親と2人で暮らしていたそう。母親の再婚後もそこでの生活は続き、ガラッと変わると思っていた生活に特に変化はなかったとのこと。その理由は、新しい父親は帰って来るのが週末だけだったからと振り返ります。
「入籍前に新しい父親とは紹介もかねて何度か食事に行った記憶があるのですが、結婚してからは家以外の交流はほとんどありませんでした。
色んなことが今までと変わっていくんだろうなって想像していたのに、思ったほどではなくて。苗字こそ変わりましたが、父は都内で仕事をしていて、平日は結婚前から1人暮らしをしていた自宅で寝泊まりして週末だけ一緒に過ごすような、単身赴任だったからです。
最初のほうは週末に一緒にご飯を食べながらぎこちない会話をしていたのですが、父の帰りが遅くなったり、私が友だちと電話するためにご飯を食べてすぐに部屋に籠ったりしていたので、覚えているような交流はすぐになくなりました」
【まったく帰って来ない義父の援助で大学に進学。次ページに続きます】