関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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父親の遊び金のために、娘は名門小学校を転校
今回の依頼者は、直和さん(67歳)です。困っているのは、息子(37歳)が、コロナ禍を機にSNSにハマり、そこで知り合った夜の街の人々と遊びに明け暮れていることについての相談でした。
「息子は歯科医で、大学時代に知り合った歯科医の嫁(37歳)と一緒に都内で歯科医院を経営しています。名門大学の付属小学校に通う娘も2人おり、2人とも優秀。息子一家は、自慢の存在だったのに、気が付けば一家離散寸前になっています」
SNSで夜の街で働く女性が営業活動を行っており、それまで店に足を踏み入れたことがない層がハマっていくことによる調査はチラホラと受けていました。
「それまでは息子は地味で真面目なタイプで、勉強一徹の真面目な男だったんです。中高一貫の名門校に進学しても、成績は常にトップクラス。ゲームで得点を取るように、高得点をたたき出していました。しかし、将来やりたい仕事はなく、学校の先生には“医学部に進学しなさい”と言われたのですが、“人の生死にかかわる仕事はできません”と、歯科医の道へ。手先も器用で、黙々と仕事をして腕を上げていたのです」
そんな職人気質の息子を支えたのが、嫁だった。
「嫁は息子よりも優秀で、経営センスも人脈もある。夫婦でクリニックを営み、スタッフも雇用し、子育てもしながらクリニックを育てて行ったのです。息子が遊び始めても、“10年以上、働きづめだったんで、いいんじゃないですか?”と鷹揚に構えていてくれたのですが、息子が何百万という単位のお金を使い始めてから、嫁も疑問を呈するようになったんです」
息子はSNSで知り合った夜の仕事の女性に入れ込むようになる。女性にいい顔をするために、その仲間の店で湯水のようにお金を使うようになった。毎月、数百万円使うような遊びをしていたら、あっという間に資金は枯渇する。
「嫁は“自分の貯蓄の範囲内だろう”と思っていたようですが、家族の貯金にまで息子は手を付けた。娘たちの高額な学費が払えないことを息子に訴えると、“俺のカネだ。俺をバカにするガキどもに学費は払わない”と言ったんです。それで、嫁は娘たちを別の小学校に転校させてしまった。そして、その言葉に怒り心頭になった嫁は、離婚準備に入っています。クリニックは株式会社にしており、その財務も経営も嫁が握っているのです」
【嫁がいなければ、息子はただの職人歯科医……次のページに続きます】