福島県双葉郡浪江町の大堀地区で300年以上の歴史を誇る大堀相馬焼の特徴は、「青ひび」「左馬(走り駒)の絵」「二重焼き」だ。
「陶器を本焼き後に窯から出すと、素材と釉薬の縮小率の違いから、貫入音という美しい音と共に青い陶器の表面に細かな亀裂が入ります。これが青ひび。左向きに走る馬の絵は、“右に出るものがいない”の意味から福島で親しまれる縁起もの。大小異なる2つの器を重ねて焼く二重焼きは、熱を伝えず、冷たいものを注いでも結露しない構造です」と、「松永窯」3代目窯主・松永和夫氏。
急須の蓋や側面、湯呑の側面にある刳り貫きは、波間に浮かぶ千鳥模様。ひっかいてつける波模様も粋である。茶系の色みは、鉄分を含んだ土を溶いて筆で塗り、釉薬をかけて焼くことで生まれる。
「大堀相馬焼が存続の危機に陥ったのが、平成23年の東日本大震災。浪江町全体が帰還困難区域となり、大堀相馬焼特有の釉薬や粘土が一切使えなくなりました」と、松永氏。しかし、職人たちはこの苦境に負けず、存続に向け立ち上がる。松永窯は窯を西郷村に移し、他の産地の原料を用いて試行錯誤しながら今日まで歩んできた。
「大堀相馬焼の窯元は現在10軒のみ。各地で福島の伝統を継承し、これからも先人たちの想いを残していきたいです」(松永氏)
【今日の逸品】
大堀相馬焼の二重急須と夫婦二重湯呑
松永窯
5,500円~(消費税込み)