取材・文/池田充枝

放浪の天才画家といわれる山下清(1922-1971)は、東京に生まれ、激動の昭和を生きて、49歳という若さで亡くなりました。

その波乱にとんだ短い生涯は、映画やテレビドラマになったこともあり、美術ファンのみならず幅広い層に知られています。しかし、マスコミ等が伝えたイメージは真の姿と異なるところがあり、作品や資料、本人の文章を通して画家としての再評価がなされています。

画家、山下清の画業と人物像を紹介する展覧会が開かれています(11月23日まで)。

《自分の顔》貼絵 1950年 
(C)Kiyoshi Yamashita 2021

本展では、少年時代の初期作品から晩年の作品まで、貼絵、油絵や水彩画、ペン画、陶磁器、放浪日記など約130点を展示します。

《パリのサクレクール寺院》貼絵 1962年
(C)Kiyoshi Yamashita 2021

本展の見どころを、北海道立旭川美術館の学芸員、関口千代絵さんにうかがいました。

「山下清は12歳で入った千葉県の養護施設『八幡学園』で、教育の一環として行われていた『貼絵』と出合います。学園での生活をモチーフにした貼絵に取り組み、安井曾太郎などの著名な画家や美術関係者から天才少年画家として注目を集めたのが16歳のころです。

《ともだち》貼絵 1938年
(C)Kiyoshi Yamashita 2021

当時の作品《ともだち》で、人物の洋服には古い切手が使われています。

しかしそんな学園生活に飽きてしまい、放浪の旅に出ます。ときたま家や学園に戻っては、旅先で見た風景を貼絵にしました。

《長岡の花火》貼絵 1950年
(C)Kiyoshi Yamashita 2021

山下清の代表作《長岡の花火》。花火見物の人々をびっしりと細かく貼絵にしており、観る者を感嘆させたといいます。打ち上げられた花火は、独自の技法『こより』を駆使して、暗闇に浮かび上がる花火を繊細に表現しています。

会場を埋め尽くす群衆をペンで描いた《東京オリンピック》では貼絵にとどまらず、多彩な技法を使って制作したことがわかります。

《東京オリンピック》ペン画 1964年
(C)Kiyoshi Yamashita 2021

自身の残した放浪日記の言葉などと合わせて見ていただくことで、山下清の『真の姿』を知っていただける展覧会です」

激動の昭和をひたむきに生きた足跡をたどる展覧会に、ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
放浪の天才画家 山下清展
会期:2021年9月18日(土)~11月23日(火・祝)
会場:北海道立旭川美術館
住所:北海道旭川市常磐公園内
電話:0166・25・2577
https://artmuseum.pref.hokkaido.lg.jp/abj
開館時間:9時30分から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし9月20日、11月1日は開館)、9月21日(火)
料金:HP参照
アクセス:HP参照

 

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