関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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両親が95歳で大往生した
今回の依頼者は、加藤律子さん(仮名・64歳)です。律子さんは都内の資産家の一人娘で、不動産運営会社を経営しています。
といっても、実験を握っているのは、夫(65歳)で、「面倒なことは、みんな彼に任せているんです」とおっしゃいます。
超有名ブランドで全身を固め、真っ白なテリア系のワンコを抱えています。よくしつけられてて、律子さんの腕の中でおとなしくしている。白いワンコは「涙焼け」といって、目の下が赤くなってしまうコが多いのですが、腕の中にいる犬にはそれがない。見ていると律子さんが目の下をこまめに拭いています。ワンコと相思相愛のようです。
相談というのは、結婚38年の夫の浮気疑惑について。2人の間には、37歳を筆頭に3人の子供がいて、いずれもかなり前に独立しているそうです。
「ずっと夫と2人暮らしで、つかず離れずという関係だったのですが、最近、夫が妙に私に冷たいんです」
律子さんの夫は婿養子です。大学時代に知り合って恋愛結婚して、資産家の一人娘だった律子さんの家に入ったとのこと。
「ウチの両親は古い人なので、私の結婚相手は自分たちが決めたかった。でも私が夫を連れてきたので、最初は反対しましたよ。でも、やがて夫のことは認めてくれましたが、だいぶきつく当たったみたいですね」
結婚当初の夫の給料では、アパート暮らしがせいぜい。律子さんの両親は「ウチの娘をそんなところには住まわせられない」と都心にある自分たちが住んでいるマンションの別フロアを購入。結婚祝いにプレゼントしたという。
「別の階とはいえ、近くに私の両親が住んでいるから、肩身も狭かったんだと思います。そんな両親も、去年は父が、そして今年は母が95歳で大往生したんです。そのあたりから私に対してぞんざいな態度を取るようになったんです」
【「義実家の商売を助けてたまるか」という夫の思い。次ページに続きます】