戦国時代、武将は数多くの武具・戦着(いくさぎ)を誂(あつら)えました。それらは機能性だけでなく、軍や自らの士気を高めるための見た目や意匠にも工夫がこらされました。
これらは泰平の世が続いた江戸時代にも、武家の格式を示す道具として代々が備えました。
大名細川家に伝わる歴史資料や美術工芸品を保存管理・研究し一般公開している永青文庫には、初代細川藤孝(幽斎)に続く歴代藩主たちが所有していたと考えられる武具などが多数伝わっています。
名門細川家の武具・戦着を通して、歴代当主の美意識を偲ぶ展覧会が開かれています。(9月20日まで)
本展の見どころを、永青文庫の学芸員、輿石英里子さんにうかがいました。
「肥後熊本54万石を治めた大名細川家には、武家の格式を象徴する鎧や兜、陣羽織などが多数伝わっていますが、それらは単なる戦の道具ではなく、当主のこだわりや好みが反映されています。本展では、細川家に伝来する武具や戦着を通して、武家男性の洒落た一面をお楽しみいただきます。
注目作品は『鳥毛九曜紋付陣羽織』。鳥の羽根を1本ずつ麻糸で留め付けた珍しい陣羽織です。これまで細川家11代・斉樹(1789-1826)所用として19世紀に制作されたと伝えられてきましたが、この度の調査により16世紀末~17世紀前半に制作された可能性があると判明しました。
泰平の世が続くと、実用性をあまり考慮しない形式的な陣羽織がつくられましたが、本作は羽根のほかに木綿、和紙、薄綿、天鵞絨(ビロード)を使用するなど、雨天や冬場の戦を想定したつくりになっています。最新の調査結果とともに超絶技巧の陣羽織を是非お近くでご覧ください。
そのほか、2代・忠興(1563-1645)考案の『三斎流』具足や、3代・忠利(1586-1641)所用と伝わる変わり兜、熊本のお国拵「肥後拵」の大本として知られる『信長拵』、南蛮飾りの影響がみられる陣羽織など、多彩な作品をご紹介します。大名細川家の個性豊かな武具、戦着をお楽しみください」
工夫を凝らした鎧や兜に男たちの心意気が感じられます。会場でじっくりご鑑賞ください。
【開催要項】
美しき備え—大名細川家の武具・戦着
会期:2021年8月17日(火)~9月20日(月・祝)
会場:永青文庫
住所:東京都文京区目白台1-1-1
電話:03・3941・0850
公式サイト:https://www.eiseibunko.com/
開館時間:10時から16時30分まで(入館は16時まで)
休館日:月曜日(ただし9月20日は開館)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝