【ビジネスの極意】決断することがリーダーの仕事現場の声を重要視するのは、組織内の環境を整える上でも大事なことである。しかし、現場の声を重要視しすぎて、決断まで任せてしまうと様々な問題が発生しかねない。
リーダーシップとマネジメントに悩む、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」から、「決断」について考察してみよう。

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「現場の声を重視し、現場に決断させるリーダー」は本当に正しいのか?

「部下=現場。現場の声にしっかり耳を傾けたうえで、現場の成長を考えて彼ら自身に決断させている」というリーダーは少なからずいるのではないでしょうか。しかし同時に「このやり方は本当に正しいのだろうか」と悩んでいるリーダーもいるはずです。というのも、こうした「現場主義」は組織の決断スピードを鈍らせてしまい、パフォーマンスを下げる場合があるからです。以下ではこの「現場における情報収集と決断のあり方」について、3つの視点から考えていきます。

情報収集は重要、しかし「決断」はリーダーの仕事

まず紹介するのが「識学」というマネジメント理論の「リーダーの仕事=決断」であるという考え方です。リーダーは仕事をしていく中でさまざまな判断を迫られますが、正しい判断をするためには正しい情報を集めなくてはなりません。したがって、情報収集を目的に部下の声を聞くのは正解だといえます。

しかしこのときに「そういう情報を持っているなら、現場が決断した方が早いだろう」と部下に決断を委ねるのは間違いです。組織において部下には決断に対する責任を負う機能はありません。それはリーダーの機能だからです。責任をとれない部下に決断をさせてしまうと、問題が起きたとき「責任を取るべきは決断を委任したリーダーだが、決断したのは部下」といったように「誰が悪いとも断言できない」という曖昧な状況になってしまいます。

こうした状況を回避するためには、リーダーが「自分の最も重要な仕事は決断である」としっかり自覚した上で、以下の3つの間違った思い込みから脱するよう注意しなくてはなりません。

1. リーダーの仕事はフォローだ。だから部下に決断させるためのアドバイスやサポートをしなければならない。
2. 部下にはリーダーの仕事や決断を評価する権限がある。したがって、自分の決断が部下に不評だったときのことが心配だ。
3. 権限移譲をすれば、自分の責任が軽くなる。

リーダーの仕事は決断であり、リーダーの仕事を評価するのは本人の上司や市場そのものです。自分が決断するのが怖くて「部下の意見を尊重している」などと言い訳したり、部下の声を重視しすぎてリーダーが決断を放棄したりするのは最悪のパターンです。情報収集と決断を混同せず、決断を自分の仕事として受け入れることが大切です。

フラットな組織で部下に安心感を

次に紹介するのはハーバード・ビジネススクールの教授であるエイミー・C・エドモンドソンが提唱した「チーミング(Teaming)」という理論からの視点です。

「チーミング」とは、部門や業種、職位を超えてチームをつくるフラット型組織によってチームメンバー間で効果的な協働を生み出すことです。ルーチン業務ではなくイノベーション業務に向いている組織の考え方であり、変化に柔軟な対応をすることを目指しています。

チーミングを取り入れた組織において、リーダーは現場に対して「明確なビジョンで組織の方向性を示す」「メンバーが安心して発言できる環境の構築」「協力しやすい場とリソースの提供」といった役割を担い、組織が正しく機能するようにマネジメントします。

明示された方向に向かって部下が安心して発言や行動を自主的に行うことで新たなアイディアが生まれ、課題解決のための決断を自分自身で下せるようになります。これらの積み重ねによって部下は失敗してもそこから学び、学習しながら実行することが定着していくため、柔軟性のある組織へと変わっていきます。このようなフラット型組織が構築でき、組織として正しく機能しているのであれば、リーダーは様々な場面で部下に責任感を持たせ、決断させることができるでしょう。

「組織の成功循環モデル」で意見や行動を引き出す

マサチューセッツ工科大学の教授であるダニエル・キムが提唱した「組織の成功循環モデル」とは、組織内メンバーの「関係性」の質を高めることで「行動」や「思考」が変化し、組織が継続して成果を上げていくことが可能になるとした組織理論です。

良い結果を求めて目先の数字(結果)を前提として行動しても成果が上がらないといった「結果」の質が低下した場合、結果を出せなかったことへの叱責や無理な目標を押し付けられるなどの対立が起こりがちになります。このようなことから現場メンバーの「関係性」の質が悪化し、モチベーションが下がってしまうことでさらに結果の質が低下するなどマイナスのスパイラルとなって続いていきます。

一方、結果よりも先に、組織内の「関係性」を向上させた場合、メンバー間での尊重や上司と部下の相互理解が進みます。アドバイスの投げかけや、それによる気づきなどが発生し、自ずと行動や思考が良質なものに変化して、引いては良い「結果」にもつながります。また、良い「結果」は「関係性」の質をさらに向上させるため、良い結果を何度も繰り返すプラスのスパイラルとなっていきます。

つまり、リーダーは第一に部下たちの「関係性の質」にフォーカスをあてることで、組織の持続的な成長を目指します。メンバーの意見が活発に交わされる環境では、個人は自分自身の意見を積極的に共有して、自分の意見に沿った意思決定や行動を起こすでしょう。この「自発的に思考して決断、実行する」サイクルを繰り返すことによって、メンバーの「行動の質」が高まり、「結果の質」も向上。リーダーはこの好循環を生み出すことで、部下に決断を託すことができるのです。

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いかがだっただろうか。リーダーは決断を「自分の仕事」とするだけでなく、部下に責任感を持たせ、関係性をよくすることにより、組織の成果向上につながっていくことがおわかりいただけただろうか。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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