取材・文/沢木文
親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970代~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。
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東京都八王子市に住む佐藤昌代さん(仮名・67歳・元地方公務員)は、シングルマザーの姪(25歳)に頭を抱えている。姪は19歳で女児を出産し、現在は母子で昌代さんが所有するアパートの一室に住んでいる。
【これまでの経緯は前編で】
姪とはいえ、相手は化け物だと思え
昌代さんの育ったエリアは、「困ったときはお互い様」という思いが強い。
「それは、昔の話。他人に迷惑をかけないように生きる教育がされていた時代だから成立した。今は、それが大きな間違い。安易に助けてしまうと、自立する意思がない人になってしまう」
昌代さんは姪とその娘を愛していることはわかる。しかし、同時にその辛辣さにも驚く。
「金が絡んでいるからですよ。あと、同じ年(67歳)の夫が、姪に対してデレデレしている。私は高校卒業から、夫は大学卒業後から、ずっと地方公務員として働いてており、姪のように危なっかしくてかわいいタイプは周囲にいない。たぶん、夫は姪に何か“粉をかけられ”て、いい気になっているんだと思う。定年後、ボランティア活動や管理人としてアパートのメンテナンスをする以外、やることはないですからね」
タダで住ませた上に、色目を使われ夫はそちらになびいてしまっている。
「姪とはいえ化け物だったんですよ。仕事はコロナ前までは、キャバクラで働いていたのですが、今は何をしているかさっぱりわからない。時々、外泊もしているみたいです」
6歳の娘はどうしているのだろうか。
「隣に私たちがいるけれど、やはり自分たちは邪魔者だと思っているからか、こちらには遠慮して来ません。スマホを持っているからそれを見ていれば時間はつぶせます。それに6歳とはいえ、しっかりしているんですよ。お米を研いで炊飯器にセットして、自分でご飯を炊いて納豆と一緒に食べている」
貧困状態にある女性を長年取材しているが、「お米は高級品なので、主食はパンかうどん」という人が多かった。加えて、ご飯の炊き方を知らず、レトルトしか食べたことがない人も少なくない。
「米は私が差し入れているんです。だって姪が不憫なんですもの。我が子がお腹を空かせているって、母親として一番つらいことだと当時は思っていたんです。でも、姪はどこ吹く風。ご飯の炊き方を姪の娘に教えたのは私です。みそ汁やカレーなどの作り方も教えているんです。しかし姪は一切の感謝をしない。今は私が米を差し入れする習慣だけが残りました」
【姪がいることの損失は、入るはずの家賃6万円、差し入れの1万円、夫婦仲の悪化……。次のページに続きます】