取材・文/ふじのあやこ
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、そのときに感じた率直な思いを語ってもらう。
今回お話を伺った、さくらさん(仮名・41歳)は、36歳のときに結婚して、現在は都内で旦那さまと暮らしています。さくらさんは義両親にある秘密を持ったまま結婚をして、今やっとその秘密を打ち明けることができたと言います。
「きっかけは病気の再発という全然良くないことでしたが、それでも私を受け入れてもらえたことはとても嬉しかったんです」
両親のような夫婦になりたいと思っていたのに……
さくらさんは神奈川県出身で、両親と3歳上に兄のいる4人家族。小さい頃、両親は年に数回大きなケンカをしては、その度に派手な仲直りの仕方をしていたと言います。
「両親の出会いは職場で、結婚を決めたのが早かったことが関係しているのか、まだ若いカップルのような派手なケンカをすることが年に何度かありました。ケンカといっても、母親が一方的に怒って父親がそれをなだめるような感じで、夜中に響いていたのは母親の声だけ。ケンカの後は、父親が数日家をあけた後、仲直りのしるしにパーティーみたいなご馳走が出るという流れでした。兄と私はいつからかこのご馳走が楽しみで、当時、兄と同じ部屋で寝ていたんですが、母親の怒った声が響くと『3日後はご馳走だな』って言い合っていました(苦笑)。最初の頃は、親がケンカなんて不安だったとは思うんですが、だんだんとそれにも慣れて、私たちはすっかりご馳走のことで頭がいっぱいでしたね。中学生にもなると、今までのケンカとは違って、お互いに口をきかない時期があるだけになってしまいご馳走コースはなくなったんですけどね」
そんな両親のことが大好きだったさくらさんは、小さい頃から結婚に憧れを持っていたそう。しかし、29歳のときに乳がんを発症したことを機に、結婚を諦めたという過去を持ちます。
「いつまでに結婚したいと思っていたわけじゃないけど、なんだかんだいって仲良しでいつまで経ってもカップルみたいなところも素敵だなって。
病気が見つかったのは幸いにも初期の状態だったんですが、主治医からは『若年層でがんになるということは、それだけ再発のリスクを伴う』とも言われてしまい……。結婚してしまうと、相手に背負わすリスクも増える。健康って結婚への一番の条件のような気がしたので、病気がわかったときに一度結婚については諦めました。拒否されるのか怖くて伝えることもできないと思っていましたから」
【誰にも「病気のこと」を言いたくない。次ページに続きます】