誰にも「病気のこと」を言いたくない
さくらさんは、病気の発症がわかる前から転職活動をしていて、すでに次の企業への入社日も決まっていました。病気を理由に内定を辞退することにして、しばらくは療養に時間を充てたと言います。当時一人暮らしをしていたそうですが、体のことも考え実家に戻ります。
「誰にも言えなくて、内定後の健康診断を受けられませんでした。
私の場合は初期で部分切除のみ、手術のときに数日の入院だけで、その先は投薬や放射線治療などがあったんですが、抗がん剤治療をするかどうかはまだ選択できる段階だったので、結局受けませんでした。外から見たら大きな変化はありませんが、心労から激やせしてしまって。親にも迷惑をかけてしまったという思いでいっぱいでした」
そこから数年は恋愛をする気もまったく起きなかったとか。旦那さまと知り合ったきっかけはSNSで、最初は友人関係で、まさか結婚まで進むとは思ってもいなかったそうです。
「SNSを始めたきっかけは流行っていたからってだけです。本当に軽い気持ちで始めましたし、そこでは結婚する気はないこと、友人が欲しいことも伝えていました。
最初は相手からのアクションで連絡を取り合うようになり、毎日1通ずつといった小さいやり取りを1年ぐらい続けて、一度会ってからはすぐに打ち解けて急速に仲良くなりました。彼には付き合おうと言われたときに、病気のことを伝えたら受け入れてくれて。知り合って2年でプロポーズを受けました。
そのときに、私は病気のことを誰にも言いたくないと伝えてしまい、彼はそれを受け入れてくれました。“誰にも”には夫の両親も含まれます」
優しくされる度に「病気を隠していること」「妊娠しないこと」への罪悪感が強くなる。【その2に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。