取材・文/ふじのあやこ

【家族のかたち】何があっても家族。東京から関西に戻って来た兄、そして「おかえり」と言った母親~その2~

時代の移り変わりとともに、変化していく家族のかたち。幼少期の家族との関係を振り返り、自身も子供を持つようになったからこそわかるようになった思いを語ってもらいます。~その1~はコチラ

今回お話を伺ったのは、兵庫にある企業でOLをしている陵子さん(仮名・30歳)。陵子さんは兵庫県出身で両親と6歳上に兄のいる4人家族で、陵子さんが中学生の時に大学進学を機に兄が上京。そして陵子さんも社会人になった矢先、母親が足を悪くして手術、入院をすることになります。

「一度は簡単な手術だったのに、術後に転んだことで手術した足が複雑骨折してしまい悪化。ほぼ寝たきりになり、家で面倒を見られないということで、入院は1年以上に及びました」

久しぶりに会った兄は女性の姿に。入院中の母親は兄に一度も声をかけることはなかった

母親の見舞いに訪れたお兄さんに陵子さんは絶句。一緒に暮らしていた頃の面影は一切なくなっていたと当時を振り返ります。

「兄は女性になっていたんです。病院の入口で待ち合わせしたんですが、あっちが見つけてくれないとわからなかったほど、別人でしたね。まぁ、手術はしていないようなので、性別は男性のままなんですけど。とにかくびっくりしましたよ! 見た目は完全な女性で、ちょっと綺麗だったし。

私は母親に会わすのを少し躊躇しました。寝たきりになり、体だけじゃなく精神的にも母親は弱っていたから。でも、私に判断することはできなくて、兄が希望したので病室に連れて行くことにしました」

そして、母親とお兄さんは対面。母親は一切会話をしなかったと言います。

「兄がただ話しかけているというような状況でした。一瞬でさまざまなことを察知したのか、母は一度兄の顔を見たっきり反対側を向き、一度も目を合わすことはありませんでした。兄はそのまま東京のお土産を置いて、帰って行きました。兄を追いかけたかったけど、精神的なダメージを受けた母親を一人にするのも不安で、病院の面会時間後に兄に電話をして、実家に来てもらうことにしたんです。

そんな行動をしたのは、自分だけでは抱えきれなかったから。家で父親に会わそうと思ったんです。健康な父親なら兄のことを無視せずに、もしかしたら叱ってくれるんじゃないかなって」

【父親は兄を元に戻そうとするも平行線のまま、兄とは疎遠に。次ページに続きます】

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