猫にだって相性がある!先住猫と新入り猫を仲良くさせる方法【猫のふしぎ第18回】

空前の猫ブームといわれる昨今。でも、猫の生活や行動パターンについては、意外と知られていないことが多いようです。人間や犬の行動に当てはめて考えて、まったく違う解釈をしてしまっていることも少なくありません。昔から猫を飼っているから猫の性格や習性を熟知していると思っていても、じつは勘違いしていたということが結構あるようです。

そこで、動物行動学の専門医・入交眞巳先生(日本獣医師生命科学大学)にお話を伺いながら、猫との暮らしで目の当たりにする行動や習性について、専門的な研究に基づいた猫の真相に迫っていきます。

初めて後輩猫を迎えた時のわさびちゃんちの一味ちゃん。母さんが保護した子猫たちをじーっと見つめて、観察していました。

初めて後輩猫を迎えた時のわさびちゃんちの一味ちゃん。母さんが保護した子猫たちをじーっと見つめて、観察していました。

猫を飼い始めて、しばらくすると「1匹だけじゃ寂しいんじゃないか」、「友達や兄弟がいたら猫同士で遊ぶかな」とか考えて、2匹目を飼いたいと思うようになる人も多いかと思います。

その一方で、最初の子が新入りさんに嫉妬しないかとか、相性が悪かったらどうしようとかいった不安もあるでしょう。

そんな時、以前お話しした猫の持つ学習能力を応用すれば、先住猫さんが比較的スムーズに新しい家族を迎え入れることができるのです。

ポイントは、少しずつ距離を縮めること。新しい家族を迎えた場合、先住猫さんの前にいきなり新入りさんを連れて行くのではなく、最初はちょっと離れたところで見せて、双方におやつをあげながらなでたりして、「あの子は怖いやつじゃないよ」と思わせることが重要です。

そうやって徐々に距離を縮めていけば、一緒に暮らせるようになります。猫の学習能力を活用して、相手の猫がいても大丈夫、いやむしろおやつさえもらえる、と覚えてもらうことで、関係がスムーズに構築できるのです。

弟分のでんすけを猫っかわいがりするお姉ちゃん肌の一味ちゃん。

弟分のでんすけを猫っかわいがりするお姉ちゃん肌の一味ちゃん。

 ■猫は人間が思う以上に素直な存在

とはいえ、猫にも相性の問題があります。大の仲良しになる猫たちもいれば、顔を合わせればうーうーシャーシャーうなりあって大喧嘩。仲良し猫同士がするアログルーミングなんて夢のまた夢、とてもじゃないけど一緒には暮らせないという関係になることもあります。でもたいていは、お互いの存在に慣れれば、同じ家の中にいてもさして気にしない程度の仲になれるかもしれません。相性と猫同士のコミュニケーション能力は猫次第なので、人間は猫に様子を見ながらゆっくり導入してあげる、相手の存在を恐怖と不安で満たさない、ということを心がけるくらいでしょう。

他の猫を迎えることで猫同士が嫉妬し合って、関係が陰湿なものになる、と心配な面もあるかもしれません。嫉妬という言葉は、何か大切なものを失うことを恐れたり不安に思う気持ちを意味しますが、人間の場合、往々にして嫉妬+恨み、嫉妬+嫌悪感など、複合的な感情となることがあります。猫はというと、恐れや不安はありますが、それに連動して新しいやつを連れてきた人に対する怒りだとか嫌悪感といった感情は起こりません。単純に見知らぬ猫が自分の安心できる場所(コアエリア)に入ってきた不安と恐怖、相手とのコミュニケーションがうまくいくかどうか、の問題になるようです。

わかりやすく表現してみましょう。飼い主さんが新しい猫を連れてきたとします。子猫ならなおさら、いろいろなお世話もあるでしょうし、大人の猫であっても新しい環境に馴れてもらうために飼い主さんなりに気を配ります。

そんな時、先住猫は「ボク、遊んで欲しいな」「ちょっと寂しいな」と思うかもしれません。でも、「あいつが来たせいでボクは遊んでもらえなくなった、だからあいつが憎い」という風にはなりません。

猫と猫、猫と人だけでなく、猫と犬だって仲良くなれます。

猫と猫、猫と人だけでなく、猫と犬だって仲良くなれます。

■猫のペースにあわせてゆっくりと

だから、先住猫が新入りを嫉妬心からイジメる、ということはありません。もし先住猫が新入りをいじめたとしたら、それは単なる猫同士の力関係や性格、相性の問題であり、飼い主さんを巡る嫉妬心によるものではないということです。逆に先住猫が怯えてしまったとしても、それも猫同士の問題です。

相性や力関係のことは猫同士にしかわかりませんが、猫が寂しいという思いをしないように飼い主さんにできることは、新入り猫がきても、今までと同じように、あるいは今まで以上にたっぷりかわいがって、たくさん遊んであげることです。愛情をいっぱいあげて、安心させてあげて下さい。

猫同士のことばかりではありません。保健所やボランティア団体などから猫を譲り受けたい、野良猫を保護して家族として迎え入れたい、だけどなついてくれるか心配、という人もいるでしょう。そんな時にもやはり、猫の学習能力を応用すると良いかと思います。最初のうちは驚かせないように気を配り、抱っこしたり撫でたりといったことを無理強いせず、撫でるときも体中ではなく頭から首までの間の部分をちょこっとなでる程度にとどめておきましょう。緊張がほぐれてきたらおやつをあげたり、おもちゃで遊んだりして、この人と一緒にいても大丈夫、むしろ楽しい、おいしいものがもらえる!と思ってもらうようにするのです。

野良出身であっても、普通に生まれ育った猫であれば、もともと野生動物ではなく、人と共に暮らすDomestic animal(家畜)ですから、人間には慣れやすい素質は持っているはず。焦ってはいけません。それぞれの猫さんのペースで、様子を見ながら仲良し作戦を進めて見て下さい。

入交眞巳さん

指導/入交眞巳(いりまじり・まみ)
日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒業後、米国に学び、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。日本ではただひとり、アメリカ獣医行動学専門医の資格を持つ。北里大学獣医学部講師を経て、現在は日本獣医生命科学大学獣医学部で講師を勤める傍ら、同動物医療センターの行動診療科で診察をしている。

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累計21万部を突破した「わさびちゃんシリーズ」の 第1弾『ありがとう! わさびちゃん』(小学館刊)。

■わさびちゃんファミリー(わさびちゃんち)
カラスに襲われて瀕死の子猫「わさびちゃん」を救助した北海道在住の若い夫妻。ふたりの献身的な介護と深い愛情で次第に元気になっていったわさびちゃんの姿は、ネット界で話題に。その後、突然その短い生涯を終えた子猫わさびちゃんの感動の実話をつづった『ありがとう!わさびちゃん』(小学館刊)と、わさびちゃん亡き後、夫妻が保護した子猫の「一味ちゃん」の物語『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館刊)は、日本中の愛猫家の心を震わせ、これまでにも多くの不幸な猫の保護活動に大きく貢献している。

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