NHKで放映中の大河ドラマ『真田丸』もいよいよ大詰めを迎えています。天下分け目の関ケ原の戦いで西軍にくみした真田昌幸・幸村父子は、和歌山県高野山に蟄居を命ぜられ、14年の歳月を過ごしました。その間に、父・昌幸はあえなく力尽き、その遺志は子・信繁(幸村)に委ねられることとなりました。
後に大阪の陣にて″日本一の兵(つわもの)″と称えられることになる、真田幸村。その雌伏(しふく)の舞台となった地・高野山と九度山周辺には、真田ゆかりのスポットが点在しています。そのいくつかをご紹介しましょう。
■1:蓮華定院
真田昌幸・幸村父子が最初に身を寄せたのが、高野山の蓮華定院です。鎌倉時代に開創され、長野県佐久・小県(ちいさがた)地方の豪族の崇信を受け、真田家とは宿坊の契約を結んでいました。
寺院奥には真田家の墓所があり、幸村の兄である信之(信幸)とその息子・信政が祀られています。
幸村たちが過ごしたであろう「上段の間」には、焼酎を所望する幸村の書状など、真田ゆかりの品が展示されています。
蓮華定院は現在も宿坊として宿泊が可能で、滋味深い精進料理の夕食や、中庭を囲む静かな佇まいを楽しむことができます。朝のおつとめも参加可能で、多くの外国人客のために英語での案内も行われています。
【蓮華定院】
住所:和歌山県伊都郡高野町高野山700
電話:0736-56-2233
※1泊2食付き9500円~
■2:真田庵(善名称院)
蓮華定院に身を寄せた真田父子はその後、妻子との生活が許され、高野山のふもとの九度山(くどやま)に庵を移します。その庵跡に立つのが善名称院で、真田庵とも呼ばれています。
境内の瓦や門、絵馬などいたるところに、真田の旗印である六文銭や、家紋のひとつ、結び雁金紋があしらわれています。
境内には昌幸と幸村、幸村の息子・大助の霊を祀る真田地主大権現や、幸村が屋敷に落ちた雷を封じ込めたという、雷封じの井戸などの見どころもあります。
九度山での14年間を経て、真田幸村は再び大坂城へ向かうこととなります。このとき、九度山から大坂へ抜け穴を通って戦場へ出向いたという伝説が残るのが、真田古墳。真田庵から東へ約170m、実際は古墳時代後期の古墳です。
【真田庵(善名称院)】
住所:和歌山県伊都郡九度山町九度山1413
電話:0736-54-2019(九度山町役場)
※真田庵は無料、敷地内の真田宝物資料館は200円
■3:九度山・真田ミュージアム
今年3月13日に開館したミュージアム。エントランスでは甲冑姿の真田3代が迎えてくれます。館内では九度山での真田父子の生活がドラマ仕立ての映像で紹介されるなど、豊富な展示内容に時間を忘れて見入ってしまいます。
さらに来年2月28日まで「大河ドラマ展」を開催中で、出演者の着用衣装や小道具なども展示されています。
【九度山・真田ミュージアム】
住所:和歌山県伊都郡九度山町九度山1452-4
電話:0736-54-2727
※入館料500円
■4:幸村庵&柿の郷くどやま
真田庵の隣に古民家を改装してオープンした『幸村庵』。九度山の姉妹都市である長野県上田市で修業を積んだ蕎麦職人によるおいしいお蕎麦がいただけます。
こしのある二八蕎麦は、きっと幸村も食べたかったであろう、故郷・信州の蕎麦です。
【幸村庵】
住所:和歌山県伊都郡九度山町九度山1404
電話:0736-54-3751
※写真は幸村御膳2100円
また、六文銭グッズが揃うお土産処が、道の駅「柿の郷くどやま」です。産直の農産品やベーカリーカフェなどもあり、散策の休憩に最適です。
【柿の郷くどやま】
住所:和歌山県伊都郡九度山町九度山入郷5-5
電話:0736-54-9966
■5:南海・真田赤備え列車
南海高野線の2000系車両(4両1編成)に、真田幸村の赤備え甲冑をモチーフにした、赤備え列車が運行中です。外装・内装ともに赤をベースに、六文銭などがデザインされています。
ただし、いつ走っているかは公表されていませんので、乗ることができればラッキー!
また、南海では九度山駅までの往復乗車券と「九度山・真田ミュージアム」の入場券をセットにした真田・九度山きっぷを発売中です(来年2月28日まで)。九度山の土産物店などでの特典もあり、九度山への足を便利にお得にしてくれます。
【南海・真田赤備え列車】
問い合わせ電話:06-6643-1005(南海テレホンセンター)
静かな九度山のまちなかは、六文銭が描かれる赤い幟で、にぎやかに染められています。のんびりと散策すれば、真田父子の面影がよみがえるようです。貧しく厳しい生活ながらも、きっと心穏やかな時間がここにはあったのだろうと、思いをはせることができます。
大坂の陣へと馳せ参じた幸村には、地元・九度山の多くの若者が従ったとか。土地の人々との真田氏との深い絆は、今もかの地の随所に感じられます。
※続けて次回、高野山周辺に点在する、一度は訪ねてみたい4つの古い社寺についてご紹介します。ご期待ください。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。