文/小坂眞吾(サライ編集長)
去る6月8日(金)に、東京・内幸町で催された第3回「九州魅力発掘大賞」授賞式において、昨年の『サライ』6月号(2017年5月10日発売)で特集した「『天主堂』光と祈りの旅」が最高賞の「大賞」をいただきました!
同賞は文字通り、九州の知られざる魅力を発信した雑誌、新聞、テレビなどのメディアを表彰するもの。前身の「南九州PR大賞」から数えて11回目という歴史があり、昨年はNHKの『ブラタモリ』が大賞に輝いています。
今年は210点という選考媒体(雑誌130、新聞40、映像40)からの大賞ということで、うれしさより驚きのほうが先に立ちました。
今回大賞をいただいた『サライ』の特集は、「信じることは、生きること」を通奏低音に、天主堂をメインビジュアルにして、キリシタン400年の受難と復活の歩みを跡付ける旅特集です。
私が「カクレキリシタン」の歴史に初めてじかに触れたのは、20年以上前。当時在籍していた雑誌『BE-PAL』の取材で、天草の崎津にある天主堂を訪れた時のことです。日本の典型的な漁村集落の中心に、違和感なく溶け込むゴシック式の教会。対岸から、係留されたたくさんの漁船越しに見るその光景に、私は涙があふれるのを止めることができませんでした。
それは、風景としての美しさの向こうに、人の営みの美しさ、信仰と暮らしが密接に結びついた「信じることは、生きること」を感じ取ったからでしょう。
4年前、私がサライの編集長職に任じられた時、いつか必ずキリシタンと天主堂の特集を組む、と決めていました。そのチャンスは早くも2年前に訪れます。長崎・天草の教会群のユネスコ世界遺産登録申請です。でもこの時は、ユネスコ側からコンセプトの練り直しを指摘され、申請はいったん取り下げられました。登録延期の報道が相次ぐ中、予定していたサライの天主堂特集も、取りやめざるをえませんでした。
けれど、長崎・天草の教会群は、サライ読者なら生涯に一度は訪れるべき場所です。生きることの意味、生きることの美しさ、生きることの幸せ。人生の素晴らしさに改めて感動できる、人生観を深める旅ができる、特別な場所なのです。
ならば、世界遺産かどうかなんて関係ない。ユネスコの「ご意向」を「忖度」している場合ではない! 世界遺産になっていないにもかかわらず、天主堂の特集を組んだのには、このような想いがありました。遠藤周作原作、マーチン・スコセッシ監督の映画『沈黙』が公開されたことも(2017年1月日本公開)、私の背中を押してくれました。
「大判の雑誌故の写真の美しさもさることながら、記事の質・ボリュームともに他を圧倒するものだった。様々な旅の形態の中で、人間としての「鎮魂の旅」という在り方に、ある種の新鮮さを覚えた。」
「『受難と復活のキリシタン文化400年』のタイトル通り、ページすべてに編集部の熱意と迫力を感じた。キリシタンの歴史・文学・教会建築・隠れキリシタン信仰などがわかりやすく記されていて、ぜひゆっくり行ってみたいと思った。」
以上は、九州魅力発掘大賞審査委員の皆様から頂いたコメントの一部ですが、拝読して目頭が熱くなりました。編集部の目指したものが、きちんと皆さんに伝わっているのですね。こういうコメントをいただくと、編集者をやっていてよかったな、とつくづく感じます。
世界遺産への再申請は「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として、すでに内定報道が出ています。6月下旬の世界遺産会議で正式決定の見込みで、私としても嬉しい限りです。そのために長年にわたって尽力された関係者の皆様には、本当に頭が下がります。
授賞式には、オール長崎ロケの1st写真集『ここから』(講談社)で特別賞に輝いた欅坂46の長濱ねるさんもご出席。大賞のご褒美というわけでもないのでしょうけど、記念撮影ではねるさんのお隣に並んで座ることに。じつは私の娘が、ねるさんの大ファンでありまして、ねるさんと一緒の写真を見せたら「ズルい!」と言われました。
生きててよかった、と心から思える、何から何まで幸せな授賞式。JR九州様をはじめ、関係各所の皆様に改めて御礼申し上げます。
※『第3回九州魅力発掘大賞』各賞の一覧は下記の通りです。
【大賞】
サライ6月号
「『天主堂』光と祈りの旅」
【雑誌部門】
Discover Japan 6月号
「柴咲コウ、嬉野の茶師・松尾俊一に会いにゆく。」
【新聞部門】
読売新聞 日曜版
「名言巡礼」
(九州を取り上げた9回分)
【映像部門】
NHK総合テレビ
「LIFE!~人生に捧げるコント~」
熊本スペシャル
【特別賞】
長濱ねる
代表作:写真集『ここから』(講談社)
サライ編集長/小坂眞吾