取材・文/柿川鮎子
【獣医さんに聞く】成功する!譲渡会でのペットの引き取り
新型コロナウイルスの感染拡大により、米動物虐待防止協会(ASPCA)は、ロサンゼルスの保護施設での犬や猫の引き取りが70%増えたと発表しています。特に感染が広がっているニューヨーク市内の動物保護団体では、犬や猫の引き取りが増え、シェルター内がほぼ空になったことが報道されました。

日本でも保護施設からのペットの引き取りが広まっています。自治体やボランティア団体からペットを引き取る時、大切なことは何か、磯子ねこの会(いそねこ協議会)のお手伝いもしている、ひびき動物病院・院長岡田響先生に聞いてみました。

■最後まで責任をもって飼う覚悟は必須

まず大切なことは、“ペットが死ぬまで責任をもって飼育できるか”という点です。今は新型コロナの影響で家にいる時間が多くても、いずれ仕事で家を空ける時間が増えるかもしれません。環境が変化しても飼育ができるかどうか、予測した上で飼育する覚悟が必要です。

岡田先生は「お家にいる時間がある、というのは大事なことですね。私も今の状況になり、家族と家にいる時間が少し増え、新型コロナウイルスに関する悪いニュースばかりの中で、家族やペットと一緒の空間にいることが、いかに自分の癒しや助けになっているかを、認識しています。

家で誰かと一緒にいる、特にペットと一緒にいられるのは、幸せなことだと思います。 自分自身の体験からも、ペットの飼育をぜひ推奨したいところですが、やはり気安くそれを薦められないのは、お世話する責任があるからです。

介護や転勤など、思いがけないことが起こり、大変になった時でも面倒をみないといけない現実があります。費用もかかるので金銭的な面も考えて飼いましょう。ペットとの生活は、一度始めたら途中でやめることはできません。

でも、一方で、動物たちが与えてくれるものは、その大変さすら上回る、何事にも代えられない貴重なものばかり、ということも知って欲しいです」と教えてくれました。

■譲渡からと決めた後、具体的にどこからお迎えするか

ペット飼育に関して、家族全員の合意を得た上で、どこからお迎えするのが良いでしょうか。飼い主のいないペットを引き取ろうと考えたら、まずは住んでいる地域の自治体にある、動物愛護センターなどで定期的に行われる、譲渡会を見学するのが(距離的に)簡単ですが、現在はコロナウィルスの影響で、ほとんどの譲渡会が休止されています。

一方、地元で活動しているボランティア団体はインターネットなどで多数見つけることもでき、現在も活動を継続しているところがあります。自治体も民間団体も、譲渡の条件についてはそれぞれの団体ごとに異なるので注意が必要です。無料で引き取りという条件であっても、経費としてワクチン代などを後で請求されるケースもあります。費用についてはあらかじめ、話を聞いておいた方が後でトラブルを防ぐことができます。

岡田先生は「自治体でも、ペットショップでも、様々な団体でも、きちんとした対応をしてくれる方なのかどうか?を見て頂く必要はあります。今までそこにいる動物をきちんと扱っているのか?という重要な背景を知ることにもつながります。

譲渡の場合は、様々な場所から保護した動物を扱います。したがって、病気やケガや虐待されていたなど、動物自身がトラブルを抱えていることが、全くない訳ではありません。あったとしても、引き取りを決めたら、すべて受け入れる必要があります。

譲渡というと無料で簡単に動物が手に入ると思われがちですが、次の飼い主さんへの橋渡しは、簡単なことではありません。保護動物に何かあった時に、状態を改善するために、時間もコストも手間も人手も、たくさん掛かっていることをぜひ知っておいて欲しいと思います。

自治体は予算がありますが、ボランティア団体はほとんどが寄付などで運営されています。限られた資金や人手を使って、“いかに保護動物に対して最善の飼育管理ができるか?”という、厳しい課題を抱えながら、譲渡会を行っています。そうしたことも、飼主さんが知った上で、引き取ってもらうのが理想的です。

それぞれの団体は“どこでどれだけ活動してきて、どうやって今があるか”でいろいろな差があります。そのため、譲渡に関しての条件や時期などについては、団体によってかなりばらつく印象があります。

動物病院の先生方は飼い主さんに合いそうな動物種や、入手先を、大抵どこか無難なところをご存知です。病気以外のことは聞けない、なんて言われてしまうのですが、どこか紹介して欲しいという相談は、多くの獣医さんにとっては、嬉しい相談でもあります」と教えてくれました。

譲渡に関して地元の動物病院に問い合わせるのは意外と盲点でした。そこで信頼できそうな獣医さんがいたら、ぜひホームドクターになってもらいたいですね。

■どんな子がわが家に最適か

譲渡可能な犬や猫から、どの子がわが家に適切かを見極める必要があります。特に犬は運動量の多い犬種もいるので、その子の性格や飼育に関する注意点を聞いておきましょう。

岡田先生は「全くはじめて飼育する場合は、どんな子がいいのか?心配になることも多いでしょう。これも動物病院で聞いてもいいんですよ。 ぜひ気軽に相談してみて下さい。ご家族の中で好きな種類などもあるでしょうけれど、その子が家にいるとどうなっているか?を獣医さんや動物看護師さん、トリマーさんや動物トレーナーさんなどに相談してみてください。

体の大きさ、犬種、猫種 、オス、メス、毛の長さ、お手入れ、病気、などなど飼う前に気にして欲しいこともたくさんあります。動物病院では、ペットショップ・ブリーダー・譲渡会など、さまざまなところから迎え入れた動物をたくさん知っていると思います」とアドバイスしてくれました。

■譲渡されてから続く、ペットとの生活

家に引き取った後のケアも大切なポイントです。できれば信頼できるホームドクターの協力があれば心強いもの。何でも相談できる獣医さんの存在は、ペットとの幸せな生活に大きな影響を与えます。

岡田先生も毎日ホームドクターとして活躍されていますが、獣医さんから見たよい飼い主さんというのはどんな飼い主さんなのでしょうか。

「きちんと普通の面倒を見てくれる方が一番です。 ご飯をあげて、うんちやおしっこのお世話をして、安心して眠れる場所を提供して、よく遊んでくれる方。そしていつもと様子が違う時は動物病院に連れてきてくれる方です。

さらに、ちょっと難しく言うと、猫らしい生活、もしくは犬らしい生活が与えられ、それと一緒に飼い主さんの生活もきちんと成り立たせることができる人です」と教えてくれました。

米国シンクタンクの社長で国際政治学者のイアン・ブレマー氏は新型コロナウイルスの影響で人々の生活が困難を極めている中、「人間らしさを失わないために、犬はとても良い」と犬の飼育を積極的に薦めています。世界的な経済学者が犬の力を信じている点に、ニューヨーク市民が拍手喝采していました。

ペットの存在がどれほど人々の心を癒してくれるのか、はかり知れません。未曽有の危機の中にいる私達を支えてくれるペットの存在は、これからより重要性を増すと考えられています。

岡田響さん(ひびき動物病院院長)取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com/

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

 

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