世の中にはさまざまなタイプの人間がいる。その中でも「困った人」が上司になってしまったらどうしたらいいのか。会社という組織において、この悩みは大きな問題だ。
リーダーシップとマネジメントに悩む、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」から、困った上司への対応の仕方を学ぼう。
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困った上司の元でどう成果を上げるのか
「上司に恵まれないため、実力が発揮できない」と悩むビジネスパーソンは少なくないようです。上司にリーダーの資質がないと思われる場合、部下である「あなた」はどうしたら成果を上げることができるでしょうか?
イヤミばかりいう上司にどう対抗するのか
会社員である以上、上司や同僚は選べません。良い上司に恵まれてラッキー!と思っても、転勤や異動がつきもの。その状況が永遠に続くことはありえないのです。
そして日本の会社は年功序列制が残っているところが多く、誰でも一定期間会社に在籍していれば、自動的に上司になってしまう仕組みがあります。すると、どうしてもリーダーとして不適格な人が上に立つことが出てきます。会社に勤めているならば、この問題は付いて回り、避けて通ることはできないわけです。
もちろん、自分から異動願いを出して、動くことはできるかも知れませんが、異動先の上司がまともな人とは限りません。
そして「あなた」は、どんな上司の下でも、与えられた環境で最大限の力を出さなければなりません。ですから、「困った上司の下でどう仕事のパフォーマンスを上げておくか」は、重要なテーマの一つです。
よくあるパターンに、上司がイヤミばかり言ったり、怒鳴ってばかりで、どうも萎縮してしまったり、やる気がなくなってしまったりする、というのがあります。一方で、場当たり的な指示を出す上司に振り回され、残業が続いてしまうようなこともあります。では、そんな場合、どのように振る舞うのがベストでしょうか?
困った上司を顧客だと思う
元アップル管理職だった松井博さんは米国アップルで学んだ処世術として、「上司をお得意様と考えろ」と言っています。
上司とお得意様の共通点はたくさんあります。どちらもあなたに仕事を与えてくれ、それに対してお金を払ってくれます。ご機嫌を損ねたら大変なところもよく似ています。お得意様に悩み相談や保護を期待する人はいません。人格者であることも期待しないでしょう。(中略)
上司をお得意様と考えれば、やるべきことは実にはっきりしてきます。上司のことをよく知り、上司に気に入られ、上司の要求は可能な限りのみ、そして上司に対して賢く営業することです。[1]
状況は何も変わらなくても、相手を顧客と捉えることで、相手のニーズを知り、自分の甘えを捨て去る。
顧客には、場当たり的な指示をして、しょっちゅう細かい部分を変える人、激情型の人、ルーズな人、仕事に協力的でない人、いろいろな人がいます。上司もこう言った顧客の一人だと考えることで、「相手のニーズを満たすにはどうしたらいいか」を考えろというわけです。
では具体的にはどうすればいいのでしょうか。
お得意様のことをよく知るのは当たり前のことです。いつもどんなサービスや商品を注文してくれるのか。口うるさいのか、あるいはそうでもないのか、趣味は何か、家族構成はどうなっているのか、どんな話題を好むのか、それらを知っているのと知らないのとでは大違いです。
上司もまったく同じことです。まず相手を知ることが上司を味方につけるための第一歩です。[2]
例えば、場当たり的な指示をする顧客には、書面でのやりとりが有効かも知れませんし、または、プロジェクトのラフな段階から頻繁に見せておき、細かいやりとりを重ねながら合意形成をした方が、機嫌を損ねずに有効かも知れません。まずは相手を知り、相手が求めているものを与える、それが上司と良い関係を築くための第一歩だというわけです。
不機嫌型の上司の場合、感情を切り放す
なかには、自分の不機嫌を職場で振りまくタイプの人もいます。特に不満はないのに不機嫌で、職場のムードが悪い。こうした上司には、どのように対処すればいいでしょうか。
なかには「上司が機嫌が悪いのは、自分のパフォーマンスに不満があるからかもしれない」などと先回りしてくよくよ考えてしまう人もいるようですが、時間の無駄です。
アドラー心理学を紹介した「嫌われる勇気」では、その感情は誰の問題か? と切り分けて、自分に関係ないところは「自分の問題ではない」と捨てるべきと説いています。
まずは「ここから先は自分の課題ではない」という境界線を知りましょう。そして他者の課題は切り捨てる。それが人生の荷物を軽くし、人生をシンプルなものにする第一歩です。[3]
上司が不機嫌なのは、上司の問題であるとして切り捨てるのです。そして淡々と仕事の成果を求めましょう。この態度は、どんな人間関係にも有効です。
嫌味をいうタイプの上司には反応する前に考える
不機嫌なだけなら無視できますが、あなたに向かって、小言や嫌味を言ってくる上司もいます。
内心、あなたのためを思ってくれているのかもしれませんが、腹が立ってひとこと言い返したくなることもあるでしょう。なかには、「負けるものか」とばかり、感情で対抗している人がいますが、むしろ逆効果です。
「俺の力を見せてやる」と対抗していたら、相手はいよいよ感情的になり、あなたに高圧的になって権力争いを仕掛けてくることもあるでしょう。こうなってしまうともはや仕事は進まず、客先に迷惑がかかるだけです。
もっとも大事なことは、反応する前に一呼吸置いて考える、ということです。上司からカチンとくることを言われたら、そのボールをどう受け取るか、どう反応するかを考えて対応するのです。そして、上司との「権力争い」に乗らないようにするということです。権力争いは泥沼化しますから、百害あって一利ありません。
「7つの習慣」で知られるスティーブン・コヴィー氏はビジネス・パーソンに多くの影響を与え続けていますが、彼が影響を受けた本について、こう言っています。
その本には次のようなことが書いてありました。「刺激と反応の間にはスペースがある。そのスペースの間には、反応を選ぶ自由がある。私たちの成長と幸福は、その選択が鍵を握っている」[4]
これは同時に多くのビジネス書が共通して説いている普遍的な教えでもあります。まさにスペースの間の「反応を選ぶ自由」をじっくり考え、どう反応するかを「選ぶ」ことで主体的になれと言っているわけです。
まとめ
困った上司とうまくやるためのヒントをご紹介しました。
そもそも、上司と部下であるあなたは、同じ目的(会社で利益を上げる)に向かっている同士のはず。それが、内部で内輪揉めし、権力争いしている状態になるのは無駄なのです。少なくとも、会社がその困った人を上司と決めたのなら、立ち回り方を考えるのは部下の仕事になります。難しい顧客に当たったと思い、工夫してみてはいかがでしょうか。
筆者:のもときょうこ
早稲田大学法学部卒業。損保会社を経て95年アスキー入社。その後フリー。著書に「日本人には「やめる練習」が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。編集に松井博氏「僕がアップルで学んだこと」ほか。マレーシアマガジン編集長。
[1]「僕がアップルで学んだこと」松井博(アスキー新書)P186
[2]「僕がアップルで学んだこと」松井博(アスキー新書)P187
[3]「嫌われる勇気」古賀史健・岸見一郎(ダイヤモンド社)
[4]「7つの習慣 デイリー・リフレクションズ」スティーブン・R・コヴィー(キングベアー出版)
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いかがだっただろうか。困った上司に悩んで自分が病んでしまうケースも多いという。これが困った上司への対応の参考になれば幸いである。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/