仕事ができる人とできない人。その差はいったいどこからくるのか? リーダーシップとマネジメントに悩む、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」から、仕事ができる人の極意を学ぼう。
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仕事ができる人は「因数分解」がうまい
仕事ができる人を観察していると、「因数分解」が上手なことが多いものです。「因数分解」とは、会社で頼まれた大雑把な仕事を細かい「タスク」に分けていく力。さらにそれに優先順位をつけていき、一つ一つの仕事に集中する力です。これが上手くなってくると、マルチタスクでの仕事が容易になります。
今回は、特に忙しいビジネスパーソンに向けて、この極意を紹介しましょう。
仕事ができる人は因数分解をやっている
上司に頼まれた企画書を作っていたら、顧客からクレーム電話ですぐ来いという。ホントは来週の香港出張の手配も期限が迫っているのに……。忙しすぎて、何からやっていいのかわからない。なぜ俺は一つのことに集中させてもらえないんだーーこんな感じでパニックになりながら、仕事をしていないでしょうか。
実は、ほとんどのビジネスパーソンは、毎日マルチタスクで仕事をしています。
例えば営業マンならこんな感じです。
大量のメールの処理をしながら、代理店に持っていくキャンペーンの内容を考えて、顧客の電話を受けつつ、本来の書類仕事を進める。事務職の人に頼んで経費の伝票を整理したり、部下からの質問に答えたり、協力会社に指示を出したりする。さらに突然クレームの電話が入ったり、会議や翌週に迫った出張の手配なども入ったりします。
秘書がいる社長ならともかく、会社で働くほとんどの人の仕事はこんな感じではないでしょうか。つまり、ビジネスパーソンには、並行処理でまとめて業務をこなしていく力が必要になります。
このマルチタスクができないと、仕事の途中で顧客から緊急の電話がかかってきて、上司から頼まれたタスクの締め切りに間に合わなくなったり、協力会社に指示を出し忘れて締め切りになってしまったりして、あっという間に「できないビジネスマン」の烙印が押されてしまうわけです。
では、忙しいビジネスパーソンが、どうやってマルチタスクを処理するのか。
この時に重要になってくるのが「優先順位づけ」です。
もっとも効果的なのは、仕事にかかる前に、緊急度や優先度をじっくり考えることです。
「フランクリン・プランナー」に学ぶ手帳術
優先順位を学ぶのにオススメのツールをご紹介しましょう。
ビジネスマンに根強く支持されている手帳に、米国生まれの「フランクリン・プランナー」があります。
これはベンジャミン・フランクリンの自伝で紹介されている手帳と、ビジネスマンに広く読まれている名著「7つの習慣」で知られるスティーブン・コヴィー博士の「コヴィー手帳」をヒントに1997年に生まれたもの。
この手帳は、マルチタスクの訓練に最適です。「7つの習慣」には「最優先事項を優先する」という章があり、どうやって「優先順位づけをするか」を語っていますが、これを実践するためのツールでもあるのです。
フランクリン・プランナーでは、毎日の仕事を細かいタスクに分けます。それぞれの緊急度や重要度によって、優先順位をつけていきます。
仕事には締め切りが決まっている緊急の仕事があります。しかし、常に緊急の仕事ばかりを優先させていくと、「重要なのに緊急でない仕事」がどんどん後回しになってしまいます。
一方で、重要な仕事に夢中になるあまり、提出日が決まっているような緊急の仕事の締め切りを忘れていると、今度は信頼が崩れます。その両立を目指すのが、この手帳なわけです。
紙に優先順位をしっかり書き、あらかじめ、締め切りや優先度をよく吟味しておくことで、今何をすべきか、次に何をすべきかの羅針盤ができるというわけです。
創造性が必要なもの、電話やメールなどの他者との連絡、進捗管理など、種類の違う幾つかの仕事を併行してやるケースでは、仕事を細かく分類して一つ一つ片付けるのが効果的です。
このフランクリン・プランナー、日本では大きな書店やロフトなどの文具店に置いてあります。興味ある方は実際に手にとってみてください。
多くの場面で因数分解が応用できる
手帳がなくても、紙を用意し、タスクを細かく書き出して優先順位を1、2、3とつけていく方法でも十分効果はあります。
ただし、大事なのは1日の仕事が始まる前に、本日やるべき仕事の「優先順位づけ」をじっくり考えること。「他人に振れる仕事」は出来るだけ早めに指示をだしたり、締め切りのあるものを確認したり、年間計画にある予定を見直したり静かに自問自答するのです。
この因数分解と優先順位づけ、ありとあらゆる場所で有効です。
例えば、レストランのウエイター、ウエイトレスの仕事。
レストランには「来店対応」「レジ」「料理を運ぶ」「オーダーをとる」「片付ける」とさまざまな仕事があります。極端に言えば、レジを優先させるか、熱い料理を運ぶことを優先させるか、来店対応をまず優先させるかで、店舗のカラーが決まってくるのです。
私自身も、編集者として3つの媒体で仕事してきましたが、ここでも優先順位づけが有効でした。
編集者は雑用の集合体のような職務です。
企画を立て、執筆や写真、デザインを依頼し、締め切りまでに印刷所に入稿する。合間に読者ハガキを整理したり、電話を受けたり、持ち込みの対応をしたり、撮影許諾をとったりします。常にいくつもの仕事を並行する上に、周りの人と協力するため、優先順位づけをしていないと、自分がなんの仕事をしていたのか、わからなくなってしまいます。
マーケティングの仕事も同様です。イベントの会場手配、SNS更新、インフルエンサー招致、企画書の手配や打ち合わせなど、さまざまな雑多な仕事が組み合わさってできていますから、時間をどう有効に使うかが非常に重要です。
それぞれの仕事をいつどうやるかを組み立てる
仕事には種類があります。ビジネスマンなら、「頭を使う仕事」「クリエイティブな仕事」「雑用」に分けられるかもしれません。
慣れてくると、朝一番の頭がスッキリしているときには執筆などの頭を使う仕事を、疲れてきたら、頭を使わない雑用(メールの返事など)に当てよう、などと時間管理のクセがついてくるのです。1日の終わりには、残ったタスクを明日に繰越すか、それとも思い切ってやめてしまうか判断します。
そして、集中が必要な仕事は「忘れて没頭できる」環境を整えることも重要です。
また、自分自身がいつ力を発揮できるかを知っておくことも重要です。例えば、「嵐が丘」を書いたエミリー・ブロンテは朝型で午前中にすべての仕事を終わらせるタイプだったようです。
夜、人がいない方がまとめて執筆するタイプか、朝一にまとめて書類仕事をするのがいいのか、職種やその人のキャラクターによっても異なります。
実は、この方法は日常のあらゆる場面で応用できます。肝要なのは、一つ一つの仕事に集中し、集中している間は他の仕事のことは一旦頭から追いやること。明らかにスケジュールが無理な場合は上司やクライアントに早めに伝えること。
そうしないと、あれもやらなければ、これもやらなければ、と気が焦るばかりで、仕事がどんどん進まなくなります。
「電話をかける」「メールの返事をする」など似たような仕事は、時間を決めてまとめてやった方が効率的です。そして集中すべき仕事をする時間を確保するわけです。
まとめ
仕事ができる人は、たいていこの因数分解がうまく、仕事量が増えてきてもパニックにならず、一つ一つの業務に集中していることが多いものです。ぜひこの因数分解の力を身につけて、「できるビジネスパーソン」を目指しましょう。
筆者:のもときょうこ
早稲田大学法学部卒業。損害保険会社を経て95年アスキー入社。その後フリーとなり「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者を経て独立。独立後は「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)など2冊の書籍を執筆。新刊「日本人は『やめる練習』が足りてない」(集英社新書)。
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いかがだっただろうか? いきあたりばったりに仕事を進めていくのではなく、仕事を因数分解して、緊急度や優先度に応じて、仕事を進めていくのが仕事ができる人である、ということがおわかりいただけただろうか。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/