【ビジネスの極意】「ダメな部下」を使わないといけない課長の苦悩

会社組織の一員として「上司とそりが合わない」「上司が無理な指示を出す」といった上司への悩みが多く取沙汰されてきた。しかし、昨今では上司の部下への悩みが問題になってきているという。リーダーシップとマネジメントに悩む、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」から、部下との接し方、上司としての責任について考えてみよう。

* * *

「イヤな部下」「重い職責」と接して、心を病んでしまう管理職が増えている。

以前、あるIT業の課長さんと、こんなやり取りがあった。

「新しく配属された人が、本当に悩みのタネでして……」
「なぜですか?」
「単純に、仕事をしないんです。依頼したことはやらないし、改善してもらおうとしても、生返事でわかっているんだかわかっていないんだか……」
「人事や部長に相談しましたか?」
「ええ、しました。けれど『他に人はいないし、なんとかうまく使ってくれ』と。どうやら他の部署で使い物にならなくて、うちに回されてきたようです」
「なんとか戦力化出来るといいですね……」
「でも、彼は戦力化以前の問題なんですよ。なぜか私、嫌われているようでコミュニケーションが取れないですし……」
「嫌われるような心当たりは?」
「怒ったりとか、責めたりとかは一切してません。パワハラって言われてしまいますので、すごく丁寧に単に仕事のお願いをしているだけです」
「どんな感じなんですか?」
「これお願いしたいんですけど、というと『忙しいです』と言われます。『ではいつまでにできそうですか?』と聞くと、『わかりません』と」
「……難しいですね」
「人事に相談したんですが、『課長としてのチャレンジです』と。もう泣きそうです。自分で採用したなら、責任も持とうと思いますが……」

彼はかなり参っているようだった。
そして最悪なことに、この課長さんは半年後、心を病んで休職してしまった。

そして最近。
全く同じような事象に言及するTweetを見た。
ああ、これは上司が絶望するやつだ、と思った。

「人をつかう立場」になった瞬間に直面せざるを得ない問題が、「コミュニケーションを拒否する(しているように見える)人」だ。

「考えるのが苦手な人もいるよ」とか
「上司の指示が悪いのでは?」という方もいるが、どうやらこれは能力や指示の内容の問題ではない。

「そういうことはしたくないんで」とか
「考えられないんで」とか
「知りません」とか

そういう、交渉を拒否する人がいるという、深刻な問題だ。

もちろん「結果を出せない人」や、「ミスをする人」、あるいは「能力が不足している人」というのは存在している。

だが、それは上司としては許せる。
というか、許さざるを得ないし、そこから職務を分解したり、仕事を入れ替えたりして、なんとか仕事を遂行できるように持っていくのが、上司の役割だ。

だが、「何もしたくない」という人や「考えたくない」という人には取り付く島もない。
上司が一番困るのは、そういう「全てを拒否する人」である。

もちろん、上司も最初の何回かは我慢する。一生懸命歩み寄ろうとする。
そして、

「そこをなんとか」
「お願いしますよ」
「これだけでいいんで」

と、なんとか仕事をしてもらえるように「お願い」する。

もちろん、旧来の上司だったら、怒ることもあるだろう。

「その態度は何だ!」とか、
「礼儀がなってない!」とか、
「やる気を見せろ!」とか。

ただ、最近はそういう事を言うと、すぐに「パワハラ」などと言われてしまうので、そう言うことも軽々しく言えない。
だから、今の上司が出来るのは「命令」ではなく「お願い」だ。

だが、「お願い」が無碍に断られ続けると、上司はもう「ああ、この人とは仕事ができないな」と思ってしまう。
そして、それが続くと、上司も徐々にその人と話すのが辛くなってくる。
冒頭の話にある通り「イヤな上司」と同じくらい「イヤな部下」と接することは、心を病むのだ。

そして、徐々に上司は自分の心を守るため、「その人と接しないこと」を第一に考えるようになる。

【次ページに続きます】

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