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文/印南敦史

『定年後に泣かないために、今から家計と暮らしを見直すコツってありますか?』

「定年なんて、ずっと先のこと」と思っていたのに、ふと気がつけば、もうあと数年。ましてや「老後2000万円問題」が持ち上がったりすると、老後についての不安は瞬く間に現実味を帯びるものだ。

ファイナンシャルプランナーである『定年後に泣かないために、今から家計と暮らしを見直すコツってありますか?』(畠中雅子著、大和書房)の著者も、老後資金の準備は早くスタートする必要があると主張している。

準備を先送りにするほど老後資金は貯めにくくなるし、資金準備を確実なものにするためには、お金の基本的な知識や家計のやりくり方を身につける必要があるというのだ。

その際の重要なポイントは、自分の実力に見合った目標額を定めること。過度に高額な目標を掲げると、老後に至るまでの生活に無理な節約を強いる可能性が高いというのがその理由だ。

 実際に定年後の生活設計のご相談を受けていると、目標額が定まらない方が少なくありません。「3000万円あれば、足りますか?」「できれば7000万円くらい貯めたいんですけど」など、目標額で悩む方がたくさんいるのです。このような質問を受けた時に私は、「一般論で語られている金額を参考にしても意味がありません」と答えるようにしています。必要な老後資金額は、各家庭の「年間の赤字額」をもとに計算するものだからです。(本書「はじめに」より引用)

そこで、「家計の見なおし方」を解説した本書が役に立つわけである。とくに注目したいのは、第1章「老後資金、我が家の場合、結局いくら必要ですか?」で明らかにされている老後資金の目標額の求め方だ。

なぜならここで著者は、聞くに聞けない老後資金についての不安に答えてくれているからである。とくに冒頭の「老後の資金は3000万円ぐらい必要って本当?」という問いは、「老後2000万円問題」に直結するだけに興味深いところだ。

だが、老後資金は「最低でも3000万円必要」なのかという問題に対する返答は、「イエスでもあり、ノーでもあります」という意外なものでもある。

 老後資金の必要額は、人によって異なります。たとえば、生活費は家族構成、収入やこだわりによって大きく違います。また退職金や年金額など、老後の収入も人によって異なりますから、一概に3000万円などとはいえないのです。(本書21ページより)

言われてみればたしかにそのとおりだが、では「年金問題」についてはどうだろう?「年金制度は破綻するからあてにできない」という意見が多いと、やはり不安になってくるものである。

 相談業務の中で「年金は破たんしますよね?」と聞かれることもありますが、そのような時には「年金の支給率については、目減りするしかありませんが、年金制度そのものが破たんしているわけではありません」とお答えしています。(本書23ページより)

年金制度が破たんしてしまうのであれば、健康保険制度や介護保険制度など、年金以外の制度も相当おかしな状況になってしまうはずだというのだ。それに、自分の力でどうにもならないことを嘆いていても、具体的なプランを立てる妨げにしかならない。

仮に年金制度が破たんするのであれば、公的年金なしでの生活設計を立てなければならないことになる。だが年金がもらえないとして計算した場合、老後の生活は成り立つだろうか?

 多くの方の答えは、ノーだと思います。年金制度の先行きを嘆いたり、政策の不備をあげつらうよりも、年金だけでは不足してしまいそうな金額を見積もり、その金額を貯める方法や生活費を抑える方法を考えることに力を注いだほうが、ずっと建設的だと思います。(本書24ページより)

つまり、考え方の方向性を変えることこそが重要なのだ。そして、そう考えた場合、老後の生活設計は“年金制度ありき”を基本にすべきだというのである。

* * *

たとえばこのように、純粋な疑問に対して簡潔に答えてくれているだけに、読んでみればかなりの不安材料を解消できるはず。不安の少ない豊かな老後を実現するためにも、ぜひ読んでおきたいところだ。

『定年後に泣かないために、今から家計と暮らしを見直すコツってありますか?』

畠中雅子著

大和書房

本体1,300円+税

発行年2017年3月

『定年後に泣かないために、今から家計と暮らしを見直すコツってありますか?』

文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。

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