“アルムナイ”とは、本来は学校の「卒業生」「同窓生」といった意味だが、最近は企業の「退職者」や「OB・OG」を指す言葉として使われている。さらに、そのような一度退職した元社員を再雇用する動きを「アルムナイ制度」と呼び、近年、日本でも注目を集めている。今回は、そんなアルムナイ向けのコンサルティングなどを提供するハッカズークが、会社経営者や役員・会社員・公務員など合計140名を対象に行なった「アルムナイとのつながりに関する意識調査」の結果を紹介する。多くの人が、退職者と継続的に連絡をとり、関係を継続することに前向きであることが判明した。以下、調査結果を詳しくみてみよう。
約9割が「アルムナイとつながりたい」もしくは「つながっている」
「アルムナイの中に、現在もつながっている、あるいは今後つながりたいと思う人はいるか」を尋ねたところ、90%が「つながりたい人がいる、もしくは現在つながっている人がいる」と回答した。
前問で「いる」と回答した人に、その理由について当てはまるものを聞いてみた(最大3つまで)。
最も多かったのは「仕事に関係なく友人として付き合いたいから」で全体の8割にのぼった。次いで、「今の仕事へのアドバイスが欲しいから」36.5%となり、仕事の成果・改善のために、会社の中と外の両方の視点を持っているアルムナイからのアドバイスが求められていることがうかがえる。
また、「仕事上で付き合いたいから(受発注や協業など)」34.9%となり、すでに信頼関係のあるアルムナイとまた一緒に仕事をしたいという声も多く見られた。
一般的に、アルムナイとつながることで社員の退職を助長する懸念をされることがあるが、「転職を含め自分のキャリアについて相談したいから」という回答は、13.5%と少数だった。
<回答抜粋>
●今の仕事へのアドバイスが欲しいから・自社のサービスについて、中からも外からも知る人にアドバイスしてほしいし、シナジーも出したい(50代/会社員)
・情報で溢れてる現代だからこそ、オフラインで聞けるアルムナイの方々の経験談は自分にとって最強の教科書なので。(30代/会社員)
・辞めた後に会い、自社の欠点や客観的に他社と比較した強み弱みを忌憚なく教えてもらった。(30代/会社員)●仕事上で付き合いたいから(受発注や協業など)
・退職後フリーランスとして働いている方に発注して仕事をしてもらっています。内情がわかっているので、依頼する側としてもしやすいです。(20代/会社員)
・ビジネス上繋がれそうな業種、職種の方が多数いらっしゃるので。実際にwin-winになる内容であれば声を掛けさせていただいたりもしてます。(30代/会社員)
・自社の商品や特徴への理解が深く、最小限の説明で、発注した仕事に対する高いクオリティが期待できるため。(40代/会社員)
8割以上が「つながって良かったことがあった」
「アルムナイとつながったことで、よかったと思ったことがあるか」の質問には、84%が「ある」と回答。多くの人が実際にアルムナイとつながったことによる恩恵を受けていることがわかった。
フリーコメントで具体的によかったと思った点を答えてもらったところ「仕事のアドバイスをもらった」「受発注につながった」といった、質問2で尋ねた「つながりたい理由」と同じ意見が多く集まった。この結果から、アルムナイとのつながりは社員の仕事の成果・改善につながり、企業にとって利益・好影響をもたらしていることがうかがえる。
<回答抜粋>
・具体的なビジネスの相談をさせていただき、成果に繋がった。(30代/会社員)
・業務上のアドバイスを他社視点でもらうことができた。(30代/会社員)
・アルムナイより顧客を紹介してもらった。退職した後も会社の良いPRをしてくれている。(30代/会社役員)
・スキルレベルの高いアルムナイの方に参画してもらったことで、単なる業務委託だけでなく、社員のスキルアップ向上にもつながっている。(30代/会社員)
一方で、中には異なる理由で「良かった」と思ったことがあるという意見もあった。
●モチベーションにつながった
「目に見える成果を上げている姿を見て刺激を受けた。(30代/公務員)」、「同期入社して転職した人がどんなキャリアを歩んでいるのか聞くことができてモチベーションがあがりました。(20代/会社員)」など、自身のモチベーションにつながったという声も。
●現在のキャリアへの自信につながった
「転職先で良いポジションを担っており、自社のキャリアに市場価値があることを感じられたから。(40代/会社員)」、「転職先で活躍しているので、どこに行っても活躍できる証明になった。(30代/会社員)」など、アルムナイとのつながりから、自身のキャリアへの自信につながったという声もあった。
一方で「つながりたくないアルムナイがいる」は約6割
つながりたいと思う人がいう一方で、つながりたくない人もいる!? 調査では「つながりたくないアルムナイはいるか」尋ねたところ、62%が「いる」と回答した。
つながりたくない理由について当てはまるものをどれか聞いている(最大3つまで)。
その結果、「仕事の面で信頼できない人だったから」55.2%、「人として相性がよくなかったから(信頼していないから)」54%に続き、「良い辞め方ではなかったから」36.8%が上位に上がり、仕事ぶりや人柄だけでなく最後の「辞め方」も重要な要素となることがわかった。
アルムナイと社員がつながりを持つことは、企業にとっての直接的な利益(受発注など)はもちろん、社員のスキルやモチベーションの向上など、間接的にも大きなメリットがあるという結果になった。さらに、アルムナイ側にとっても、古巣や古巣社員とつながりを持つことは、仕事の相手先としての付き合いや、情報交換ができるなどのメリットがあるようだ。
文/鳥居優美