主人公は人事異動を機に早期退職・転職しての地方移住を検討し始めた東京の51歳会社員。

情報収集、移住先選び、計画立案、家族の説得、仕事&住まい探し、移住にまつわる諸手続きなど、さまざまなステップを経て、主人公が移住先である高知市内での生活を成功させるまでのストーリーと思いをまとめました。

役に立つ情報やアドバイスが満載のまんがに加え、解説記事でも実践的な知識を紹介。舞台は高知県ですが、どの移住先を考えている方にもすぐに役に立つノウハウを網羅しています。

前回の解説はこちら

* * *

【第2章 候補地絞り】

【Point 1】移住候補地を絞り込む

地方移住実現の勘所は〝具体化〞です。漠然とした憧れだけでは、計画は前進しません。具体化の第一歩は、移住の目的を明確にし、移住後に送りたい生活を具体的にイメージすることです。

「自然に根ざした仕事が夢だった。山の近くに住んで農業をやりたい」、「海辺の豊かな環境の中で子育てがしたい。家族との時間を増やしたい」、「仕事はリタイア。自分で食べる野菜ぐらいは自分で作って、あとはのんびり趣味の釣りを楽しみたい」……等々。

移住の目的がクリアになったら、次に具体化すべきは移住候補地です。Uターン・Jターンの場合や憧れの地がある場合など、移住先がある程度決まっているのならいいのですが、そうでなければまずは道府県レベルで候補地域をいくつかに絞ってみましょう。

気候(冷涼か温暖か)、大都市圏からの距離(近いほうがいいか関係ないか)、環境(自然が多い、温泉があるなど)などを考慮しつつ、旅行・出張の記憶やテレビ・雑誌で見た風景を思い浮かべれば、具体化した移住イメージに合った地域をいくつかピックアップできるのではないでしょうか。

候補となる地域をいくつかピックアップしたら、実際に各地を訪れてみましょう。百聞は一見にしかず。直観的に「ここが一番いい」、「ここに住みたい」と感じる地域がきっとあるはずです。

同時に、事前に以下のポイントについて優先順位をつけておき、優先度の高いものから順にチェックしてみてください。お気に入りの地域の中でも、都市部なのか都市周辺部なのか田舎なのか、移住イメージを実現できる候補地が絞り込まれてくることでしょう。

●絞り込みのチェックポイント

□イメージどおりの風景・空気感
□希望の仕事がある
□希望の住居・物件がある
□子育て環境が整っている(子育て世代の場合)
□交通の便がよい
□買い物・病院などのインフラが整っている
□支援制度や受け入れ態勢が充実
□その他の希望(耕作できる農地がある、快適なネット環境など)

【Point 2】移住地ランキング

 

2016年 移住希望地域ランキング
1位:山梨県(2位)
2位:長野県(1位)
3位:静岡県(4位)
4位:広島県(6位)
5位:福岡県(ー)
6位:岡山県(5位)
7位:大分県(9位)
8位:新潟県(15位)
9位:長崎県(12位)
10位:宮崎県(10位)
11位:高知県(7位)
12位:栃木県(ー)
13位:鹿児島県(19位)
14位:愛媛県(ー)
15位:富山県(11位)
16位:神奈川県(ー)
17位:群馬県(ー)
18位:熊本県(17位)
19位:福島県(16位)
20位:秋田県(8位)
※ふるさと暮らし情報センター(東京)集計(複数回答)
※カッコ内は2015年順位、(ー)は前年度20位以下

人気の移住先はどこか? 地方移住を考えている人には、やはり気になるところなのではないでしょうか。

上の表はNPO法人ふるさと回帰支援センターが発表した、2016年の移住希望地域ランキングです。これは、同センターが東京交通会館内で運営する「ふるさと暮らし情報センター」に2016年中に訪れた来場者のアンケート結果によるものです。実際に行動に移した移住希望者によるランキングですので、地方移住の現状をかなり正確に反映していると考えられます。

1位は山梨県、2位は長野県

このランキングは2009年に始まったのですが、1位の山梨県と2位の長野県は上位の常連です。山梨県は4年連続、長野県はスタート以来8年連続で2位以内に入っています。どちらも富士山や日本アルプスなどの山々に囲まれて自然豊かなのが最大の魅力で、富士五湖、八ヶ岳山麓、軽井沢といった別荘地への移住もさかんです。また、3位の静岡県も含めて、首都圏からの近さも人気の理由でしょう。首都圏へのアクセスのよさは移住への不安感を減らしますし、日頃レジャーで行く機会が多いので土地勘があるのも大きなアドバンテージです。さらに、下見に何度も行けるというメリットも見逃せません。

逆に4位の広島県から11位の高知県までは、首都圏から遠い地方が占めています。新潟県をのぞけば西日本ばかりなのは、温暖な気候が好まれることも一因でしょう。あわせて、仕事や家の紹介といった移住前のサービスや移住後のサポートなど、移住の受け入れに非常に熱心な自治体であることも共通しています。

もうひとつ別のランキングを紹介しましょう。医療・介護に余力があり、中高年の移住者を歓迎しているかどうかを公的データや独自アンケートで集計した「50歳から住みたい地方ランキング」(宝島社『田舎暮らしの本』2016年8月号)では、福岡県北九州市が1位、高知県高知市・新潟県新潟市(同点2位)、山口県宇部市・大分県豊後高田市(同点4位)の順になりました。ここでは医療と介護の充実した地方都市が上位に並んでいます。

とはいえ、ランキングはあくまでも目安です。移住目的は百人百様。その土地の気候や人との相性も人によってまちまちです。

人気の移住先イコールあなたのベストの移住先ではありません。自分のイメージにマッチした移住先を見つけてください。

※本記事は『まんがでわかる地方移住』(小学館刊)より転載したものです。


まんがでわかる地方移住
定価:本体1200円+税 著/鍋田吉郎 作画/松原裕美
ISBN9784093885720

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