主人公は人事異動を機に早期退職・転職しての地方移住を検討し始めた東京の51歳会社員。
情報収集、移住先選び、計画立案、家族の説得、仕事&住まい探し、移住にまつわる諸手続きなど、さまざまなステップを経て、主人公が移住先である高知市内での生活を成功させるまでのストーリーと思いをまんが化しました。
役に立つ情報やアドバイスが満載のまんがに加え、解説記事でも実践的な知識を紹介。舞台は高知県ですが、どの移住先を考えている方にもすぐに役に立つノウハウを網羅しています。
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【プロローグ 人生リセット】
定年まであと10年を切り、不慣れな部署に異動になった主人公・山本和也。
ごく普通の東京のサラリーマンとその家族の体験や思いを通して、いま人気の「地方移住」について学んでいきましょう。
【Point 1】地方移住のススメ
50・8%!
東京都在住の50代男性で、移住を予定または移住を検討したいと思っている人の割合です。このデータは2014年に内閣官房が東京都在住の18歳から69歳までの男女を対象に行った調査によるもので、全体でも地方移住に興味がある人は40.7%にものぼりました。
実際に地方移住する人も増えています。2014年度には、1万1735人が地方自治体の移住支援策を利用するなどして地方に移住しました(毎日新聞、NHK、明治大学地域ガバナンス論研究室の共同調査)。2009年度からの5年間で4倍以上に増えているのです。
また、NPO法人ふるさと回帰支援センターへの移住相談件数も、2014年の1万2430件から、2015年2万1584件、2016年2万6426件へと大幅に増えており、地方移住熱が高まっていることを示しています。
どうしてでしょうか?
要因のひとつとして、行政の取り組みがあげられます。地域の活性化を目指す地方自治体は、移住説明会や特設ホームページなどを通じて積極的に情報を発信するようになりました。同時に、お試し滞在といったサービスや移住者に対する支援策など、受け入れ態勢も充実してきました。さらに、こういった地方自治体の動きを2014年以降「地方創生」を主要施策に掲げた政府が後押しした結果、地方移住がしやすい環境が整ってきているのです。とはいえ、地方移住希望者の増加の根底には、何より都会で生活する人の意識の変化があるのではないでしょうか。
前述の内閣官房の調査によれば、「移住したい理由」の上位には、「スローライフを実現したいから」、「自分に合った生活スタイルを送りたいから」、「食べ物や水、空気が美味しいから」、「健康的な生活がしたいから」、「趣味を楽しみたいから」などがずらりとならびます。
一方で、「満足感や充実感のある仕事をしている」、「会社の中での地位の向上(出世)を常に目指したい」という人の割合が年々減っているというデータもあります(三菱総合研究所調べ)。これらの調査結果は、自分にとって本当に豊かな生き方とは何かを多くの人が見つめ直していることを物語っています。
働き方、暮らし方を変えたい、人生をより豊かにしたい。
地方移住によってそれを実現しようとする人が、今増えているのです。
【Point 2】地方移住の4つのパターン
地方移住は、大きく以下の4つに分類することができます。
(1)Uターン
生まれ育った地方から進学や就職などで都会へ移り住んだ後、ふたたび地方の生まれ故郷に戻ることをUターンといいます。
たとえば、山形県天童市の農家で生まれ育った人が、東京の大学に進学し、東京で就職した後、天童市に戻って農家を継ぐといったパターンです。都会は教育環境や雇用環境が整っていますが、地方には豊かな自然や人とのつながりがあります。「やっぱり地元が一番」というわけです。また、親の近くに住み面倒を見られることも、Uターンを促す動機のひとつとなっています。
(2)Jターン
生まれ育った地方から進学や就職などで都会へ移り住んだ後、故郷にほど近い地方都市に移住することをJターンといいます。
たとえば、鳥取県伯耆町で生まれ育った人が、大阪に進学・就職した後、伯耆町の隣の米子市に再就職先を見つけて移住するといったパターンです。故郷には自分のキャリアを生かせる仕事はないかもしれませんが、地方の中核都市であればそれが見つかる可能性は高いでしょう。しかも親元にも近く、自然にも恵まれています。田舎と都会のいいとこどりができるのがJターンです。
(3)Iターン
生まれ育った地域から別の地方に移り住むこと、とくに都会から田舎に移住することをIターンといいます。
たとえば、東京都目黒区で生まれ育ち、大学・就職でも東京から離れなかった人が、島での生活に憧れて鹿児島県奄美大島に移住するといったパターンです。都会にはない豊かな自然の中で暮らしたい、農業や漁業をやりたいというように、移住者の自然志向が強いのが特徴です。近年は独身女性のIターンも増えています。
(4)二地域居住
都会に暮らす人が、地方にも家・別荘を持ち、週末などをそこで過ごすという「週末田舎暮らし」の移住スタイルを二地域居住といいます。
たとえば、東京の会社に勤める人が、長野県原村に家を借りて、週末ごとに東京と原村を往復するといったパターンです。都会の拠点はそのままで田舎暮らしを楽しめるメリットがある半面、家の購入費用・賃借料や往復の交通費など経済的な負担が大きいのが現実です。
以上、地方移住を4つに分類してきたわけですが、実際には100人いれば100通りの地方移住の形があります。
地方といっても、山間部などの田舎もあれば、県庁所在地をはじめとする地方都市もあります。起業など新たな仕事に挑戦したいため、子育てのため、趣味のため、といった移住の動機もさまざまです。さらに、転職なのかリタイア後の生活なのか、年齢、家族構成等々、とうていひとくくりにはできません。
「子育てが一段落した50代前半の夫婦」をモデルケースに、地方移住を考えてみたいと思います。ひとくくりにはできないと書きましたが、地方移住の基本ノウハウは網羅しました。主人公・山本和也と一緒に、地方移住を体験してみてください。
※本記事は『まんがでわかる地方移住』(小学館刊)より転載したものです。
まんがでわかる地方移住
定価:本体1200円+税 著/鍋田吉郎 作画/松原裕美
ISBN9784093885720