男のほうから女性に迫ってはいけない」

光平さんが毎日楽しいと思うようになったのは、同じフロント係の女性の存在も大きい。

「僕より3年先輩で、仕事もできて気がきく。離婚歴はあるものの子供がいないからか、若く見える。とにかく僕を褒めてくれて、ミスをカバーしてくれる。素敵な女性だと思いながらも、僕からは絶対に話しかけませんでした。やはり、女性にとっては超イケメンの男性以外、同僚とはいえ話しかけられれば気持ち悪いし、怖いと思うから。それは娘と元妻の会話を聞き、知っていたので」

光平さんは彼女に好意を持ちながらも、徹底的に受け身の姿勢を続けること2か月。彼女から「今度、休みが合えばご飯でもしませんか?」と声をかけてくれたのだという。

「誘われて嬉しいと同時に困りました。すごく困った。どの店に行けばいいか分からず、下心があると思われても嫌だ……そんなことを考えていたら、“一人で行きにくいお店なので、付き合ってください”と、言われたんです」

彼女のリードに任せるまま、食事をして、手を繋いで帰り別れた。緊張のあまり記憶にないという。

「よく笑ってくれて、人の悪口を言わず、いろんなことを知っている。なんて楽しい人なんだろうと思っていた。彼女の僕への好意を確信してから、自分から話しかけるようになりました。誕生日の日、重くならないようにお菓子とハンカチをあげたらすごく喜んでくれた。お互いの家に行き来するようになり、向こうから結婚しようと言われました」

彼女は大手企業を退職しており、家もそれなりの貯金も持っていた。

「お金目当てではないとホッとしました。70歳くらいまではお互いの家を行き来するような生活をして、その先は後で考えようとか言っていたのですが、2人でいると安心する。好きという気持ちがありますが、孤独に耐えられなくなるような感覚があり、今は彼女の家にほぼ住んでいて、自分の家は賃貸に出す予定。人が一緒にいると安心する。誰かがそこにいてくれると、生きる張り合いが出てくるんです」

彼女は、「あなたから声をかけてきたら、絶対こうなってはいなかった。男の人は怖いから」と言っているという。今、事実婚のような状態なので、もしものときの身元引受人や、入院同意書などは書けない。今後、お互いの体調や法制度の変化を見つつ、入籍は慎重に進めていくそうだ。

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。

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