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2024年9月に総務局統計局が発表した『統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-』をみると、65歳以上の就業者数は、20年連続で増加し914万人と過去最多をマーク。就業者総数の13.5%が65歳以上だという。
現在、学童保育運営会社のスタッフとして働く康生さん(64歳)は「結局、人間の体、人の力が全てなんですよ」という。
世界を舞台に仕事するために、船の仕事を選ぶ
康生さんは、60歳で定年後、友人の会社の手伝いを経て、現在は平日3日を学童保育の現場スタッフとして働いている。
「60歳で定年するときは、ベンチャー企業の支援機構にいました。25年間勤めましたが、特にやる気もなかったので、雇用延長はやめました。60歳から65歳の“第三の青春”というべき時代を、“会社のお荷物”として過ごすのは嫌だったので」
人事に給料を聞くと、「それまでは基本給40万円に15万円の役職手当がついていたが、基本給30万円のみになる」と言った。
「同じような仕事をして、その金額ではやる気も出ない。会社も価値がないと思っているから減らしているのでしょう。同時期に退職した人の中には、子供が小学生、中学生という人もいる。それなら延長したでしょうけれど、ウチの息子はもう35歳、娘も32歳で自立している。28歳で結婚した当時の僕を褒めてあげたいです」
康生さんは私立大学の経済学部を卒業後、新卒で海運会社に就職する。
「あの頃は、世界を股にかけることが憧れだったので、商社と海運会社しか見ていませんでした。大手は全て落ちましたが、英語が得意だったことが認められ、ある会社に拾ってもらったのです。そこは鉱物運搬や石油タンカーが強かった。すぐにマレーシア勤務を命じられました」
クライアントは、現地の日本企業。現地で採掘された鉄鉱石やボーキサイトを日本に運ぶ仕事を獲得するために営業活動をする。
「“俺たちが運んだこの資材で、日本人の生活がより便利に、素晴らしいものになる”と希望に燃えて仕事をしていました。ただ、営業が向いていないと判断されたのか、すぐに海上勤務を命じられ、航海士になったのです」
康生さんは「体を使って働くこと」が好きだという。船の勤務は性に合っていた。
「仕事は8時間の交代制で、個室もある。身の回りの世話をしてくれる人もいるので生活は快適です。あとすごいのは、陸上では絶対に見られない星空、日の出、夕日などに囲まれていること。あとは半年くらい乗って、2か月休みというのも性に合っていた。給料も良かったですしね」
【世界情勢の悪化により、命懸けの仕事になる……次のページに続きます】
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