相談しないことが我が家のスタンスに
娘は高校を卒業後に公務員を目指し、専門学校に進学。現在地方公務員として働いている。一度、武志さんの提案で娘は1人暮らしをしていたが、1年ほどで実家に戻ってきたという。
「『お金がもったいない』と、勝手にマンションを退去して帰ってきてしまったんです。
娘は『早く社会人になりたいから』と大学進学を望まずに専門学校に進学して、公務員試験に合格しました。専門学校時代は友人と旅行に行くと家を空けることもありましたが、それ以外のほとんどは普通に毎日家に帰って来て、夜は私と一緒に食事をしていました。私が若い頃はそんなに真面目じゃなかったので親に干渉されることもあったのですが、娘は文句を言うところがないという感じでした。
娘はおそらく私のことが心配で1人にしておけないんだろうと思って、私から1人暮らしを経験したほうがいいと娘に言いました。娘は『わかった』とその発言も受け入れたのですが、『経験したよ』と帰って来たんですよ」
武志さんの家はずっと賃貸マンション。娘と2人になってからは状況に合わせて3度ほど引っ越しをしている。持ち家を持たなかったのは、老後1人になったときの身軽さを考えてのことだという。しかし……。
「娘が最近、私と2人で暮らす家を買うと言い出しました。そんなことを負担させられないと言っても、『負担じゃなく私の意思でそうすると決めている』と私の言い分をまったく受け入れてくれません。まだ具体的な話は出ていませんが、ほとんどのことを自分で決めてきた娘ですから、相談なしに何かが進んでいる可能性もあります(苦笑)。いまだに娘のことはよくわかりません」
父と娘、異性だから生理や体のことについて深く理解することは難しいはず。しかし、親子だからといって完全に分かり合う必要はない。なぜなら、お互いに別の意思を持つ1人の人間だからだ。別々の意思を持つからこそ、武志さん家族はお互いの人生に干渉せずに一緒に生きていくことができているのだろう。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。