「父親に会いたい?」と母親から聞かれていた
暮らしていた家から祖母の家は新幹線で2時間ほどの距離。父方の親族が持つマンションを出たと同時に母親は喫茶店の経営からも離れることになっていた。
「母親はお店の常連さんとも仲良くしていて、とても楽しそうに喫茶店で働いていたので、仕事がなくなってしまったことで気を落としていないか心配になりました。離婚したことよりも、そっちのほうが気になりましたね」
母親は離婚理由については「お互いのせい」だといつも言っていた。
「母親は定期的に父親と会いたくないかと私に聞いてくれました。私が母親に気を使って父親のことを聞けないのではって思ったんじゃないかな。
父親とは離婚後も1~2か月に一度のペースで会っていました。父親が来てくれるときもあれば、母親が父親のいるところまで車で送ってくれることもありました。母親が送ってくれたときには当時暮らしていた街にあるホテルに宿泊して、前の学校の友だちと会う時間も作ってくれていましたね」
父親との面会は中学1年生のときになくなってしまう。その理由は、母親から「父親は仕事で遠くに行くことになった」と聞かされていたという。
「父親の携帯番号を聞いていたので自分から電話することもできたんですが、思春期もあって、自分から連絡することが恥ずかしかったんです。父親に会いたいって、父親にも母親にも思われたくなかったから。
父親と会えなくなって3か月ほど経ったときに母親から父親は仕事でなかなか来れない距離になってしまったと聞かされました。父親は元暮らしていたところで家族ぐるみの仕事をしていたから本当なのかなって思いましたけど、詳しくは聞きませんでした。父親のことを母親に聞くのは、なんとなく遠慮していたんです」
結婚を決めたときに父親と再会し、そこで父親から当時のことを聞かされることになる。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。