父は最後までお酒を止めきれなかった
母親とは離婚して、父方の祖父母や兄弟はすでに死別。従兄弟などの親族はいるものの、一人っ子だった美樹さんしか、父親の世話をできる人はいなかった。病気になったときには父親は60歳を超えてすでに仕事を引退しており、家で退屈な日を送っていたという。
「父は、その頃にはもう好きでお酒を飲んでいるのではなく、暇をつぶすために飲んでいたんだと思います。病院にお世話になった最初こそお酒を断っていたのですが、また少しずつ飲み始めていて、私はそれに気づけませんでした。お酒のストックをなくしたら、毎日コンビニまでお酒を買いに行って、その場で飲んでいたみたいなんです。
それから父は肝硬変から多臓器不全となり、亡くなってしまいました」
父親が亡くなった後は家と祖父母の土地を手放し、32歳のときに美樹さんは結婚。しかし、夫の浮気が原因で37歳のときに離婚している。遺伝なのか美樹さんもお酒が強く、何かあるとお酒に頼ってしまうところがあり、元夫の浮気が発覚した辺りには毎日のようにお酒を大量摂取してしまっていたと振り返る。
「父の姿を反面教師に、結婚するまではお酒はほぼ飲まない生活を送っていました。仕事が激務だったときには私も毎日のようにお酒を飲んでいて、自分のことをアルコール依存になる可能性があるタイプだと認識していましたから。
でも、結婚を機に仕事をやめてパートをしながら子作りをしていたときに夫の浮気がわかり、そこからお酒をまた飲むようになったんです。離婚後に不眠などになり、すぐに心療内科を受診したことで薬をもらえたので、そこでお酒から離れることができましたが、またお酒に手を出しそうで、睡眠薬はずっと処方してもらっています。たまに、お酒を飲みたいなって思うときもまだありますから」
離婚前後に美樹さんが飲んでいたのは、ストロング系といわれるアルコール度数8%以上のアルコール飲料だ。美樹さんのようにお酒に強く、なかなか酔えないタイプのほうがコスパを重視してストロング系の飲料を選択してしまうことが多いという。冒頭で紹介した調査でもあったように、アルコール依存は誰でもなりうる病気である。強いからなりにくいは間違いだということが今回の取材で痛感した。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。