夫が逃げ出すくらい、だらしがない娘
娘は出産した。そして、夫が帰ってくると、幼い娘を夫に託して、店に出るというすれ違い生活だったという。
「だから3年もしないうちに破綻した。加えて、娘は家事ができない。家は散らかり放題で、誰かが何かをやってくれるのを、ボーッと待っているだけ。婿さんも大変だったと思いますよ。結局、娘が3歳になった時に離婚しましたから。あれは、娘の尻拭いに疲れて、逃げ出したんでしょう。可哀そうに、相手はバツ2になっちゃったんですよね」
それから1年間、娘は子連れでスナックに出勤していた。タバコの煙がもうもうとする店の片隅で、客がカラオケで歌う演歌やムード歌謡を子守歌に子育てをした。
「生まれてからずっと夜型生活をし、なんでも言いなりになるオジサンやオバサンと遊んでいるんですから、不登校になる。でも、娘は我が子に“学校に行きなさい”と忠告さえしない。“学校なんて別に行かなくてもいいでしょ”と言うけれど、私は学校は絶対に行くべきだと思います。机に座りルールに従って行動し、締め切りを守る。運動や楽器演奏で感覚を養って、得手不得手を体得する訓練の場ですから」
孫娘は不登校を続け、小学校6年生でコロナ禍になる。休校を謳歌し、気づけば私立のフリースクールのような学校に入っていたという。
「費用のことも考えず、娘は後先考えずに入れてしまったんでしょう。それなりに費用がかかる全寮制の学校で、主人も唖然としていました。全寮制というのが娘らしい。難しい年ごろになっていた孫の厄介払いをしたんでしょう」
コロナ禍の給付金があれば、私立の学費も払えるが、今は厳しい。しわ寄せが来るのは、聡子さん夫妻だ。
「元婿さんも頑張っているようですが、先日“まさか私立に行くと思わなかった。僕も65歳で限界があるんです”と言っていました。ハッキリ言って、お金に余裕がない家の子が私立中学校に行っても費用で行き詰まります。だって、義務教育の期間内にわざわざ私立を選ぶということは、“それなりに教育資金がある家の子”のための学校なんですから」
聡子さんは「娘ひとりなら、なんとか面倒は見れます。でも、孫までは厳しい。私たちが死んだあと、娘が北陸で頑張っている息子をあてにするのが怖いんです」と続けた。
今、少子高齢化が進み、「子供は産めばいい」という風潮になっている。しかし、子供を産むということは、社会のために働ける人になるために、育てるまでがセットだ。
当然、一人では難しい。家庭だけではなく、保育園や学校を含めた社会システムが構築されて動いている。でもそこに「親(大人)が子供を送り込む」ことをしなければ、その恩恵と訓練を受けることはできない。
聡子さんの娘は45歳、孫娘は15歳と先は長い。「努力をさせればよかった」と嘆いても、時間を巻き戻すことはできないのだ。
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などに寄稿している。