夫婦で育児を行うには妻の意識改革も必要
子どもが成長するに伴い、義母が翔平さんの家に宿泊する頻度は減ったものの、来訪の頻度は変わらず。その状況はコロナ禍によって終了を迎えるも、そのコロナ禍によって仕事を辞めることになってしまう。そのときに妻が放った言葉を今も忘れられないと訴える。
「仕事がリモートになり、その切り替えは他社よりも早かったのですが、急にリモートが始まったことに従業員がついていけなかったんです。私は部署の上の立場でもあったので、上からの命令と部下の不満が私に集中してしまい……。そのストレスから急に涙が出たり、眠れなくなったりと身体症状が出るようになり、仕事を辞めることになりました。
不調が続き、仕事を辞めることに対して妻も納得してくれていたように見えたのですが、いざ無職になると、『すぐに仕事を始めて』と。それは当然なのかもしれませんが、『子育てもろくにしないんだから、働くことでせめて子どもの役に立ってよ』と言われたんです。子育てに参加させてくれなかったのはそっちのくせに。言い返したりはできませんでしたが、本当に腹が立ちました」
再就職先を見つけ、そこから現在約3年が経っている。子どもの反抗期もあり、妻と子どもの折り合いが悪くなったときの逃げ場所として、翔平さんは子どもに寄り添っているという。
「私は祖父母のように怒らない存在として子どもにインプットされているようで、それはあまりよくないことだとわかっているのですが、子どもが懐いてくれることが嬉しくて。それが原因で妻との仲は年々悪くなっている感じがします。今はもう夫婦生活も一切なく、寝室も別。子どもの父親、母親とのつながりしか感じられないですが、子どものために離婚は考えていません」
令和5年3月31日の政府発表では、異次元の少子化対策といわれる「こども・子育て政策の強化について(試案)〜次元の異なる少子化対策の実現に向けて〜」の中で、男性の育休取得率の目標は2025年30%から、2025年までに公務員85%(1週間以上の取得率)、⺠間50%に引き上げられた。育休取得率アップを掲げることも大切だが、男性だけではない、女性の中にもある男性の子育てについての無意識の偏見にも対策が必要だと感じた。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。